食道がん治療センター

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食道がんの化学療法とは

ステージII/IIIの食道がんでは、手術の前に化学療法(抗がん剤)を行なってがんを小さくしてから手術を行ないます。

主にシスプラチン5-FUの2種類の抗がん剤(FP療法といいます)を2コース投与する場合と、
シスプラチン、5-FU、ドセタキセルの3種類の抗がん剤(DCF療法といいます)を2~3コース投与してから手術を行なう場合があります。

※最新の臨床試験(JCOG1109 NExT試験)の結果より、2022年2月3日より、cStage Ⅱ, Ⅲ食道がんに大して手術療法を中心とした治療を行なう場合、ドセタキセル+シスプラチン+5-FUの3剤併用術前化学療法を強く推奨すると変更になりました。

ただし、

  • ①高齢者や併存症などで療法のリスクが高いと想定される症例
  • ②DCF療法の管理に懸念がある場合

上記の場合には、従来通りのFP療法も選択肢となりうる、としました。

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免疫チェックポイント阻害薬

様々な臨床試験の結果を受けて、食道癌に対する免疫チェックポイント阻害剤の使用範囲が拡大してきております。

CheckMate-577

局所進行食道がんもしくは食道胃接合部がんに対して、術前化学放射線療法後に術後補助療法としてニボルマブの有効性と安全性を検証した試験です。術前化学放射線療法後に根治切除ができたステージⅡもしくはⅢの方にニボルマブを投与することで無再発生存期間が改善しました。また安全性も許容できるものでした。

ATTRACTION-1/ ATTRACTION-3

2020年2月に切除不能進行再発食道癌の2次治療以降に初めてニボルマブの使用が承認されました。2次治療の標準であるパクリタキセルもしくはドセタキセル単独療法に対し、ニボルマブ投与群で生存率の延長が認められました。
※二次治療では、もう1種類の免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブも使用可能であります。ただし、使用は限定的で、PD-L1の発現率が高いCPS10以上という条件下での使用になります。

KEYNOTE-590

切除不能進行再発食道癌の1次治療として、それまで標準治療であったシスプラチン+5-FU療法へのペンブロリズマブの上乗せ効果を調べた試験です。ペンブロリズマブを上乗せした群で全生存期間、増悪生存期間および奏効率の改善が示されました。現在では、1次治療としては、ペンブロリズマブ+シスプラチン+5-FUを行なうことが強く推奨されております。

CheckMate-648

化学療法未治療の根治切除不能な進行・再発の食道癌を対象に、1次治療としてそれまで標準治療であったシスプラチン+5-FUに対する、ニボルマブの上乗せ群(シスプラチン+5-FU+ニボルマブ)、または免疫療法2剤を併用したニボルマブ+イピリムマブ群、の優越性を検証した試験です。ニボルマブを上乗せした群、またニボルマブ+イピリムマブ群は全生存期間の延長が示されました。現在では、1次治療としてオプジーボ+シスプラチン+5-FU、およびオプジーボ+イピリムマブを行なうことが強く推奨されております。

根治的化学放射線療法・サルベージ手術

ステージIVステージII/IIIで手術を希望されない方は適応となります。

欧米では、手術を前提として、化学放射線療法を行なった後に手術を行なうことが一般的で、今後、日本でも広がる可能性があります。

ここでの根治的化学放射線療法は、食道がんを化学放射線療法単独で治療しようという試みです。  

 

化学放射線療法が無効であった場合には手術をする(サルベージ手術という)というオプションを付け加えると、手術療法にかなり近い成績があげられるといった報告もあります。

うまくいくとそのまま食道が残る(臓器温存治療)という点で魅力的な治療法ですが、治療後長い時間が経ってからの合併症や、治りきらなかったときの手術の難しさ、危険等の問題があり、十分な説明を聞いた上で、ご納得されてから受けることをお勧めします。

切除不能進行再発食道癌に対する標準治療(2024年1月時点)

1次治療

  • ペンブロリズマブ+シスプラチン+5-FU
  • ニボルマブ+シスプラチン+5-FU
  • ニボルマブ+イピリムマブ
  • (シスプラチン+5-FU)

2次治療

  • パクリタキセル
  • ドセタキセル
  • オプジーボ

臨床試験

当院では将来の食道がんに対する標準治療の確立や進歩を目指し、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)にも参加し、またその他にも多くの多施設共同研究に積極的に参加しております。

また、抗がん剤治療を積極的に行なう臨床腫瘍科とも協力し、新規抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤等の治験など、最先端治療にも積極的に参加しております。

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