食道がん治療センター
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食道とは咽頭から胃までの約25cmの細長い筒状の臓器です。
気管や気管支、大動脈、心臓、肺など重要な臓器に囲まれていて、頸部、胸部(上部、中部、下部)、腹部の5つの部位に分けられます。
食道の壁は、内側から外側に向かって粘膜(粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板)、粘膜下層、固有筋層、外膜に分かれています。
消化や吸収は行わず、食べ物の運搬に関わっています。
※当院にて図解作成
食道の粘膜から発生する上皮性悪性腫瘍です。
食道がんの組織型は大きく分けて扁平上皮癌と腺癌の2種類です。
深さにより早期がん(粘膜内まで)、表在がん(粘膜下層まで)、進行がん(固有筋層より深い)に分けられます。
食道がんは進行すると、周囲臓器(気管や気管支、大動脈、心臓、肺など)に直接浸潤したり、頸部・胸部・腹部のリンパ節に転移したり、肺・肝臓・脳・骨などに遠隔転移します。
食道がんの病期(ステージ)は、がんが食道壁のどの深さまで及んでいるかを示すT因子、リンパ節転移の程度を示すN因子、遠隔転移の有無を示すM因子の組み合わせにより決まります。
病期によって、治療方針は異なってきます(後述)。
また、食道がんの患者の約20%に胃がんや頭頸部がん(喉頭がん、咽頭がん)といった他部位のがんも重複すると言われています。
2018年に日本国内で食道がんと判明した人は25,920人であり、人口10万人あたり20.5人の割合(粗罹患率)でした。
そのうち、男性の食道がんの年間罹患数は21,353人(粗罹患率は34.7人/10万人)であり、女性の食道がんの年間罹患数は4,565人(粗罹患率は7.0人/10万人)と、罹患比は男性の方が5倍程度多いです。
食道がんの発症数は40歳代後半から増加し、60歳代後半でピークを迎えます。
一方、2018年の食道がん死亡者数は11,345人であり、全がん死亡者数の3.1%にあたります。
人口10万人あたりの死亡患者数(粗死亡率)は9.4人であり、男性は15.9人で、肺、胃、大腸、肝臓、膵臓、前立腺に次いで7番目に多い死亡理由となっています。
女性の死亡率は3.2人で、10番目以降です。
食道がんが発生する部位として、最多なのが胸部中部食道(約50%)です。
そして胸部下部食道(約25%)、胸部上部食道(約12%)、腹部食道(約6%)、頸部食道(約5%)と続きます。
食道癌の組織学的分類では約90%が扁平上皮癌であり、5%が腺癌と言われています。
食道がんの初期症状はないことがほとんどです。
がんの進行に伴い、摂食時の胸がしみる感じ、食べ物がつかえる感じ、げっぷ、体重減少、胸背部痛、声のかすれ、胸背部痛、ホルネル兆候(縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹)などといった症状が出現します。
扁平上皮癌 | 腺癌 |
---|---|
生活習慣による発生要因 | |
喫煙 | 喫煙 |
飲酒 | 逆流症状 |
フラッシャー (飲酒で体が赤くなること) | 肥満 |
熱い食べ物・飲み物 | 欧米型の食生活 |
他の病気による発生要因 | |
食道アカラシア | 胃食道逆流症 |
腐食性食道炎 | バレット食道 |
胸部への放射線治療の既往 | 胸部への放射線治療の既往 |
白板症 | 抗コリン薬の内服 |
ヒトパピローマウイルス感染 | 家族歴 |
N-ニトロアミン | H.pylori非感染 |
食道ウェブ (プラマー・ビンソン症候群) | 大腸腫瘍 |
掌蹠角化症 |
がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、適切な運動、適正体重の維持、感染防止が効果的といわれています。
しかし、残念ながらこれらだけでは食道がんを100%防ぐことはできません。 早期発見・早期治療のためにも定期的に検査を行いましょう。