呼吸器センター内科
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原発性肺がんでは多種類にわたる抗がん剤が開発され、正確な組織診断に基づく治療選択が不可欠です。間質性肺疾患においては抗線維化薬を上手に駆使し患者さんの生活の質を保ちながら治療に取り組んでいただけるよう様々な工夫をしています。気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患では必要な薬剤が重症度に応じて使用できるようにしています。肺感染症領域には様々な原因微生物がいますが、必要な抗生物質を選択できることが求められます。
これらの適切な治療のためには、組織検査、臨床検査、画像検査などを的確に実施する必要があり、気管支鏡検査におけるクライオ生検や、精密肺機能検査、運動耐容能検査、HRCTなど高精度な画像検査が実施できる体制にあり、患者さんの診療にあたっています。
当院では呼吸器センターとして内科と外科、さらには放射線科や病理診断科が協力し、肺がんやびまん性肺疾患、閉塞性肺疾患、肺感染症などの疾患に対応しています。呼吸器センター内科では各呼吸器疾患を専門とする呼吸器指導医が在籍し、これからを担う若手の医師や呼吸器専門医が一つとなって、あらゆる呼吸器疾患の患者さんとご家族の希望を伺いつつ、最新かつ最良の診療を提供することを目指して、日々切磋琢磨しています。
当科で扱う疾患は、呼吸器系(肺、気管支、胸膜)の病気です。具体的には以下のようなさまざまな病気を扱っています。
腫瘍性疾患 |
肺がん(非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、縦隔腫瘍(胸腺腫など)、悪性胸膜中皮腫、その他の腫瘍 |
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びまん性肺疾患 |
特発性間質性肺炎、サルコイドーシス、過敏性肺炎、膠原病/血管炎(関節リウマチ・強皮症・皮膚筋炎・Sjogren症候群など)関連間質性肺炎、薬剤性肺障害、石綿肺・じん肺など |
感染症 |
肺炎、肺膿瘍、胸膜炎、膿胸、肺結核、非結核性抗酸菌症、肺真菌症など |
慢性閉塞性肺疾患 (COPD) |
肺気腫、慢性気管支炎 |
気道系疾患 |
気管支喘息、咳喘息、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症など |
胸膜疾患 |
気胸、胸膜炎など |
循環障害 |
肺高血圧症、肺血栓塞栓症、肺動静脈瘻など |
稀な肺疾患 |
肺リンパ脈管筋腫症、肺ランゲルハンス細胞組織球症、肺胞蛋白症など |
これらの病気により低酸素血症あるいは高炭酸ガス血症を来した状態が呼吸不全で、経過が1ヶ月未満の急性呼吸不全と1ヶ月以上の慢性呼吸不全に分類されます。当科では急性および慢性呼吸不全の患者さんも、その病態に応じた治療を行っています。
呼吸器センター内科では各呼吸器疾患を専門とする呼吸器指導医が在籍し、これからを担う若手の医師や呼吸器専門医が一つとなって、あらゆる呼吸器疾患の患者さんとご家族の希望を伺いつつ、最新かつ最良の診療を提供することを目指して、日々切磋琢磨しています。
呼吸器センター外科・放射線科・リウマチ膠原病科・循環器センター内科・集中治療科・緩和ケア科・高齢者診療部などの多診療科、リハビリテーション部・看護部・薬剤部などのコメディカルと密接に連携し、迅速かつ安全に治療できるように体制が充実しています。
肺癌治療(化学療法、放射線療法、術後補助化学療法)をはじめとして、びまん性肺疾患に対する専門治療、急性肺炎や誤嚥性肺炎・結核や非結核性抗酸菌症、真菌症などの感染症、気管支喘息に対する生物学的製剤の導入、慢性閉塞性肺疾患に対する吸入療法やリハビリテーション、慢性咳嗽の原因精査や治療、肺胞蛋白症や肺リンパ脈管筋腫症などの稀少疾患など幅広く診療しています。重症慢性呼吸不全に対し肺移植の適応がある方には時期を逸さないように、移植認定施設と連携し、さらに移植後の患者さんの診療も行っています。
肺癌領域はNEJなどの臨床試験共同研究グループに参画し、またびまん性肺疾患領域では厚生労働省難治性疾患対策事業・びまん性肺疾患調査研究班やAMED研究に協力し患者さんのための薬剤や検査法の創出や疫学調査にかかる研究を行っています。
気管支鏡検査は年間約300件実施しています。静脈麻酔や喉頭麻酔を駆使して患者さんに苦痛の少ない検査を心掛けています。
肺癌の組織診断をはじめとして、結核・非結核性抗酸菌症・真菌症などの感染性疾患の原因微生物同定や、びまん性肺疾患におけるクライオ生検による組織診断などが可能です。超音波気管支鏡や迅速細胞診(ROSE)が導入され、組織診断の精度が向上しています。
クライオ生検は気管支鏡下局所麻酔で実施可能な組織診断で、びまん性肺疾患における新しい組織診断法です。ある程度診断に十分な大きさの組織を得ることができます。従来の組織診断法である外科的肺生検も必要な方には呼吸器センター外科で積極的に実施していますが、クライオ生検は外科的肺生検よりも短時間で施行でき、体への負担が少なくてすみます。
CTガイド下生検は、CTを用いて針生検を行う手技で、肺癌を疑う患者さんに実施し、年間10-20件程度施行しています。
気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患の診断、治療効果判定、病勢判定に不可欠です。スパイログラム、拡散能力検査、呼気NO検査以外に、Body-box法・ヘリウム希釈法による残気量・総肺気量測定が可能です。6分間歩行試験を積極的に実施し、リハビリテーションにおける評価やびまん性肺疾患における治療効果判定を行っています。必要であれば在宅酸素療法の導入も行います。
高分解能CT(1mm幅で全肺を撮影できる)によって、繊細な肺の所見を的確に解析することができます。
リンク:呼吸器センター外科、放射線治療科、放射線治療部
リンク:「肺癌患者さんのページ」
肺がんに対する治療には、手術や放射線治療、薬物療法などがあります。呼吸器センター内科では主に抗がん剤や分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬といった薬物による治療(薬物療法)を行います。肺がんの組織型や病期によっては手術や放射線治療と薬物療法を組み合わせることもあります。また、肺を覆う胸膜から発生する胸膜中皮腫は、これまで使用できる薬物が限られていましたが、徐々に治療法も増えてきています。肺がんに対する治療は特設ページに記載しておりますので、ご参照ください。
リンク:「間質性肺疾患」
間質性肺疾患は呼吸器内科医の中でも専門とする医師が少なく、本疾患群を専門的に診療できる施設は全国、東京都内いずれにおいても限られています。当院ではHRCTなどの画像検査、肺機能検査などの生理学的検査、6分間歩行試験などの運動耐容能検査をはじめ、治療決定のために必要な検査が全て施行できる環境にあります。さらに組織検査が必要なこともあり、気管支鏡によるクライオ生検・外科的肺生検などの適切な組織検査が可能です。100以上といわれる本疾患群のうちどの疾患に該当し、どのような治療が適切なのか、多科合議による診断(MDD; multidisciplinary discussion)という手法で診断し、治療を決定します。そのためには呼吸器内科医師以外に、呼吸器疾患を専門とする放射線診断医、肺病理医が診断に必要ですが、当院はこの3者が在籍する、全国的にも数が少ない恵まれた診療環境です。適切な治療が決まったら、副作用に気をつけながら通院治療を行い、定期的に効果判定を行います。
本疾患の患者さんは肺癌、肺高血圧や慢性閉塞性肺疾患、肺真菌症といった合併症を伴うことがあり、各診療科やコメディカルとの密接な連携により、包括的にこれら合併症の診療も行なっています。
当院では各診療科ががん治療に力を入れています。近年、たくさんの有効な抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤などが開発され盛んに治療が行われています。薬剤性肺傷害は稀ですがどの癌腫にも一定の割合で発症する命に関わる合併症です。間質性肺疾患の専門家の視点で肺の中で何が起きているのか、気管支鏡などを用いて適切に診断し、薬剤性肺傷害の治療をご提案、各診療科と連携してがん治療が少しでもスムーズに継続できるよう協力しています。
動いた時に酸素が低下し、在宅酸素療法が必要になることもあります。在宅酸素療法も速やかに導入することが可能です。
看護部、薬剤部、リハビリテーション部などのコメディカルとも密接に連携し、薬剤を適切に飲んでいただき、呼吸機能や体力的な低下のある方には適切にリハビリテーションを実施して、患者さんの生活の質(QoL)に配慮したフォローが可能となっています。
学術的には厚生労働省難治性疾患克服事業:びまん性肺疾患調査研究班において研究活動に参加し、患者さんのための新規薬剤の臨床試験、有益な臨床検査の開発、必要な検査・処置の保険診療収載のための活動を行なっています。
気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)はともに閉塞性肺疾患といって、空気の通り道(気道)が狭くなる病気です。気管支喘息は主に吸入したアレルゲンによるアレルギーが誘因となって気道を取り囲む筋肉(気道平滑筋)が収縮したり、気道の分泌物が増えたりして気道が狭くなります。一方COPDは主にタバコ煙を中心とした有害物質を吸入し続けることで気道に慢性の炎症が生じたり、肺の組織が破壊(肺気腫)されたりすることで気道が狭くなる病気です。
風邪などをきっかけに発作的に咳や喘鳴(ゼーゼー)が出現し、呼吸が苦しくなります。また小児期に発症する小児喘息が一旦治って発症する場合や小児期からそのまま続く場合もあります。また成人になってから発症する喘息もあります。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎を合併している患者さんも多いです。
上記症状や合併症、生活環境などの詳しい問診に加え、肺機能検査で気道が狭いかどうかを診断します。加えて呼気の一酸化窒素(FeNO)を調べることで気道のアレルギー性炎症があるかどうかを調べます。また血液検査を行ってアレルギー体質の有無やアレルゲン、好酸球(喘息に関与する白血球の一種)の数を調べます。これらの結果から患者さんにとって最適な治療が何かを判断します。
喘息はおもにアレルギーによる慢性の気道炎症を来す疾患であり、治療の基本は気道炎症を抑える吸入ステロイドになります。これに気管支拡張薬などを組み合わせて定期的に続けて頂くことで気道炎症をコントロールし症状を改善します。しかしながら中には吸入ステロイドを含む治療をしっかり行ってもコントロール不良の喘息がありこれらを重症喘息または難治性喘息と呼びます。喘息患者さんのうちの5%くらいの方がこれに当てはまります。最近では喘息の増悪に関わる体内物質であるIgEやインターロイキン-5、インターロイキン-4、インターロイキン-13、TSLPなどを特異的にブロックするバイオ製剤という注射薬が登場し今まで有効な治療がなかった重症喘息の患者さんにも著明な効果が期待できるようになりました。当科でもこれら最新の治療薬をいち早く取り入れて重症喘息患者さんの治療に当たっています。
慢性的に咳や痰がでるようになった、最近坂道や階段をのぼるときに息切れがするようになってきたという方で、10年以上習慣的にタバコを吸っていたことがあるような場合にはCOPDの可能性があります。
当科では肺のX線やCT検査で肺気腫病変や気道病変の有無をチェックし、さらには精密な肺機能検査を行うことでCOPDの診断を行います。
現在喫煙中の方では禁煙することが最も重要で必須です。しかしながら禁煙後も病気が進行し、息切れ、咳・痰などの症状が進行する患者さんがおられます。このような方には気管支拡張薬吸入などの薬物治療に加えて、呼吸リハビリテーションなどの理学療法や栄養療法などの包括的な治療が必要であり当院ではこれらを行う体制が整っています。また病気が進行して労作時などの低酸素血症や高二酸化炭素血症が慢性的に続く患者さんには在宅酸素療法(HOT)や非侵襲的陽圧換気(NPPV)などといった在宅医療の介入も行っております。
Covid-19肺炎は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症のうち肺炎を併発するものです。病状により抗ウイルス薬や抗炎症薬(ステロイドなど)の治療を行います。当院は東京都新型コロナウイルス感染症入院重点医療機関に指定されており、呼吸器センター内科ではCovid-19肺炎のうち酸素投与や人工呼吸管理が必要な中等症および重症患者さんを重点的に診療しています。患者さんが急増した場合も臨床感染症科・集中治療科・救急科と協力して円滑な診療体制を整えています。
細菌やその他の病原体による急性肺炎に対しては血液検査や胸部CTなどの画像検査だけでなく、迅速診断キットや培養検査を用いて適切な治療を提供しています。また悪性腫瘍に対する薬物療法のほか免疫抑制薬を使用中に生じる日和見感染症を疑う患者さんや治療に難渋する肺炎患者さんに対して気管支鏡を含めた精密検査を行い、培養検査だけでなくPCR検査や質量分析法などを併用し病原体の特定を行い治療に役立てています。高齢者に特徴的な誤嚥性肺炎に対しては肺炎の治療だけでなく、嚥下造影検査による原因の特定のほか体力や嚥下のリハビリテーションや肺炎の予防、退院後の在宅環境の調整など様々な職種と協力して患者さんの生活の質を維持できるような診療を心がけています。
近年日本における結核の新規登録数が低下し結核低蔓延国となりましたが、高齢者や外国出生の患者さんは増加傾向にあります。当院ではコロナ禍においても結核病棟を閉鎖することなく診療を継続してきました。外国出生患者さんや合併症を有し標準治療が困難な患者さんの診療も行っています。非結核性抗酸菌症については薬物の内服治療のほか吸入療法も行っています。結核や非結核性抗酸菌症などは病状が悪化した場合に肺から出血し、血痰や喀血を認めることがあります。血管内治療や手術療法といった内科的治療以外の方法も必要に応じて行えるよう放射線診断科や呼吸器センター外科と協力し診療を行っています。
当科は呼吸器センター外科とセンターとして一体的に、密接に連携しており、手術が必要な場合には、速やかに実施できる体制をとっています。外科手術は胸腔鏡手術が基本となっており、患者さんの術後疼痛などに対する負担の軽減を図っています。
びまん性肺疾患領域では呼吸器内科・放射線診断科・病理診断科と包括的議論が必要です。また組織診断のために外科的肺生検が診断に必要なこともあり、速やかに手術できるよう呼吸器センター外科と連携しています。また、肺高血圧症や睡眠障害などの合併症には循環器内科や睡眠呼吸器科と、膠原病肺などの基礎疾患がある場合には膠原病リウマチ内科と連携し適切な精査・治療の連携を行える体制を取っています。
肺癌領域では呼吸器内科・外科、放射線治療など多科に渡って横断的包括的治療が必要なことも多いです。このように肺癌患者さんの治療決定や、びまん性肺疾患の包括的診断が行えるように、これらの診療科が一堂に会し合同カンファランスを週1回定期的に実施しています。迅速かつスムーズに患者さんのためにベストな診療・治療ができるように心がけています。
急性呼吸不全の患者さんには循環器内科や腎センター内科、集中治療科などと連携することにより、その原因が肺疾患では無いような場合においても速やかに適切な検査・評価が行われ、迅速に治療が開始できるように体制を整えています。
進行期の肺がん患者さんに対しては、早期から痛みなどの症状を和らげる緩和ケアを、がんサポートチームと密接に連携することによって行っています。 誤嚥性肺炎の患者さんは入院を契機に消耗しADLが低下してしまうことがあります。いろいろな背景により嚥下障害があり食事を食べられない方も多くおられます。自宅に帰るのに支援が必要な方、療養施設への転院が必要な方もいらっしゃいます。呼吸器センター内科医師と、看護師、ソーシャルワーカー、リハビリテーションからPT・STが出席する合同カンファランスを週1回開催し、入院中のADL低下に対し予防・回復するための対策を話し合い、社会生活の回復と退院支援を行うために何が必要なのかを話し合って、患者さんに必要なケアのあり方を考えるようにしています。
緩和ケア科、高齢者総合診療部などと密接に連携し、適切な環境をご提供できるようにしています。