ブレストセンター

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薬物療法について

乳がんに対して行われる薬物療法には、化学療法、内分泌療法、分子標的療法、免疫療法(抗PD-L1抗体)の4種類があります。原発乳がんに対しては、サブタイプや進行病期により再発リスクを考えてそれぞれを組み合わせて治療を検討していきます。転移性乳がんに対しては、進行度合いや全身状態を考慮し検討していきます。

原発乳がんに対する薬物療法について

原発乳がんに対しては、サブタイプごとに治療方針が大きく異なりますが、基本的に再発予防のためにどこまで治療を行うかを検討していきます。

具体的に各々の薬物療法がどの程度、死亡率改善に効果があるのかを知る方法として、英国NHS(National Health Services)が公開しているPredict Breast Cancerというオープンデータソースがあります。

ルミナルタイプの場合は、ほかに化学療法の必要性についてオンコタイプDX🄬という検査を術後に追加することが出来ます。サブタイプは病理学的免疫染色(がんを顕微鏡で見て染色状態から判断)で検討されますが、オンコタイプDX🄬は乳がんの21遺伝子についてリアルタイムPCRをベースに検討される検査方法で、乳がんの予後と化学療法の効果を予測する検査です。

原発乳がんに対する薬物療法について

再発予防のための化学療法では、大きく分けてアンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤の2種類が用いられます。

アンスラサイクリン系の投与方法はddAC療法(2週毎x4回、毎回翌日にジーラスタ🄬の投与あり)とAC療法(3週毎x4回)、タキサン系にはパクリタキセル療法(毎週x12回)とドセタキセル療法(3週毎x4回)やddパクリタキセル療法(2週毎x4回)、他に両者を組み合わせたTC療法(3週毎x4回)があります。

各々の再発リスクに応じて、アンスラサイクリン系薬剤(2-3か月)とタキサン系薬剤(2-3か月)を続けて行う方法か、TC療法(3か月)を選択して行います。

>HER2陽性乳がん(ルミナルHER2タイプ, HER2タイプ)の場合は、これらに加えて分子標的薬であるハーセプチンやパージェタを投与します。分子標的薬は1年投与する必要があるため、化学療法(タキサン系)と同時に3か月投与され、残り9か月は分子標的薬のみ投与されます。術前化学療法を受ける場合、引き続く手術で乳房やリンパ節内にがんの遺残がある場合は術後の分子標的薬をカドサイラに変更することで再発抑制効果が高まることから、HER2陽性の場合は術前化学療法を受けることで選択肢が広がることになります。

>トリプルネガティブ乳がんで、再発高リスクと考えられる場合は、これらに加えて抗PD-L1抗体薬であるキートルーダを化学療法(タキサン系)と同時に投与することで病理学的完全奏功(手術時に乳房やリンパ節内にがんが遺残していない)や、再発率を低下させることから追加投与が検討されます。

原発乳がんに対して行われる化学療法にかかる料金の概算

以下が3割負担での費用になりますが、高額療養費制度を用いたり、医療費控除を利用したり、医療費を削減しながら適切な治療を受けられるよう準備をすることができます。

※ジーラスタ以外に外来腫瘍化学療法診療料1(抗悪性腫瘍剤を投与した場合)再診時 700点を含む
※当日使用する薬品によって料金が変更になる場合がございます。
※検査等の料金は含まれておりません。

副作用について

  • 化学療法に伴う合併症として、感染症・心機能障害・肝障害・脱毛・手足のしびれなどがあげられます。
    また長期的には卵巣機能障害や妊娠のしづらさ(妊孕性低下)が分かっています。
  • 虫歯から全身性の感染症を起こすことがあるので、事前に歯科受診いただき応急処置をすることがあります。
  • 脱毛に関しては完全に予防できませんが、ご希望の方には頭皮冷却装置(Paxman🄬・保険外診療)などを用いて、脱毛からの回復を早めることができます。
  • 様々な副作用に対する管理を支持療法センターと協力して行っています。
  • 妊孕性低下に対しては、ご希望の場合は当院産婦人科で妊孕性温存(未受精卵凍結、胚凍結など)や近隣クリニックでカウンセリングを行い、化学療法の導入になるべく遅れが出ないよう支援しています。
  • 当院は日本遺伝性乳がん卵巣がん総合診療制度機構(JOHBOC)の連携施設です。
    保険診療・保険外診療ともに遺伝子検査が実施可能になっています。臨床遺伝専門医・遺伝カウンセラーによる遺伝診療外来を週に一度行っています。主治医にご相談ください。
  • 術前化学療法を行い、切除した乳房内にがん細胞が残存した場合、HRERタイプではカドサイラを、トリプルネガライブではゼローダを内服など治療を追加するメリットがわかります。

乳がんの内分泌療法

  • ホルモン受容体陽性乳がんの場合、再発予防のための内分泌療法が適応になります。
    閉経前の場合は、ノルバテックスの内服を5-10年行うのが標準的で、必要に応じてLH-RHアゴニストを注射し月経を止めることがあります。
  • 主な副作用は、自覚症状としては更年期症状が、他に子宮内膜の肥厚や肝障害が挙げられます。
    また催奇性があることから、内服中は避妊が必要になります。妊娠出産を希望する場合は、主治医と相談しながら、内服の中断などを検討していきます。
  • 閉経後の場合、アロマターゼインヒビターの内服を5-10年行っていきます。主な副作用は関節痛や骨粗しょう症、薄毛や皮膚の乾燥などです。関節痛に関してはyoutubeでのストレッチなどをご紹介しています。
  • 再発高リスクの場合、ベージニオを2年、通常の内分泌療法に加えて内服するメリットがあります。

薬物療法の選択について

  • 薬物療法の選択は、サブタイプとがんの進行度合い(stage)で検討します。
  • 具体的に乳がんによる死亡リスクと薬物療法を加えることによって、その死亡率がどれくらい改善するのかを知る方法として、英国NHSのpredict breast cancerがあります。
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