泌尿器科

このページを印刷

ロボット支援下手術 とは

Intuitive Surgical社が開発した手術を支援するための医療機器、通称ダビンチ。約1cmの傷から内視鏡や鉗子(かんし)と呼ばれる金属製のツールを挿入して手術を行う点は腹腔鏡手術と共通です。従来の腹腔鏡手術との最大の違いは鉗子が多関節であることです。これにより、腹腔鏡では困難であった体内の深い場所での切離、縫合、結紮(けっさつ)といった操作が容易にできるようになりました。他、3Dモニターを搭載し、より開腹手術に近い視野が得られたり、対象物の拡大機能や鉗子に手ブレ防止機能がついたりと、腹腔鏡より正確で細やかな動きが可能となりました。

▲4本のアームのついたペイシェントカート

▲患者さんとは離れた位置より操作するコンソール

2023年度には、次世代のロボット支援手術 Hugo RAS system(通称ヒューゴ)を導入しました。ダビンチ手術と異なり、アームが独立し、オープンコンソールという特徴を有します。ダビンチと使い分け最適なロボット手術を提供します。

▲独立し自由度の高いアーム

▲テーブルセッティング

▲コミュニケーションの容易なオープンコンソール

泌尿器科とロボット支援下手術

日本ではじめて保険適応されたのは2012年4月、これまで腹腔鏡手術では難易度が高いと考えられていた
前立腺全摘除術です。

1.低侵襲性:小さい傷や少ない出血量といった体の負担が少ないこと

2.高制癌性:がんの部分を取り残すことなく摘除すること

3.機能温存:尿禁制(注1)および性機能を維持すること

これら3つの目標を、ロボットの特性をいかすことで、より達成できるようになってきました。

特にロボットは前立腺という骨盤深くの狭く暗い場所にある臓器で本領を発揮します。したがって現在、日本では全国的に普及し前立腺全摘除術の9割以上はロボット支援下手術で行われています。

他にも泌尿器科領域の手術である腎がんに対する腎部分切除術や膀胱がんに対する膀胱全摘除術はロボットを使用して行っております。

▲細かく繊細な動きが可能となったロボットアーム

泌尿器科の特徴

近年増加傾向にある前立腺がんは他のがんと異なり、5年生存率が高く進行度によっては99%以上の生存率を達成することのできるがんです。治りやすいがんと言えるかもしれません。したがって我々は術後疼痛、尿もれ、勃起機能などその後の生活の質(QOL)向上を目指し、低侵襲性と機能温存にこだわって手術を行っております。一方、前立腺がんにも種類があり、進行するスピードが早いがんも一定数存在します。それらの進行しつつある前立腺がんに対して積極的に根治治療をするべきとされています。当院では前立腺がん患者さん全員にMRI検査を行い、前立腺生検から放射線診断科および病理診断科と密に連携をとって正確な進行度診断を行っています。根治治療の一つであるロボット支援下前立腺全摘除術を行うにあたり、先の進行度によって高制癌性にもこだわり、拡大切除やリンパ節廓清(かくせい)(注2)の必要性および性機能温存の可否を判断しています。個々の患者さんのライフワークバランスまでも考慮して詳細な術式を相談して決定しています。

注2:リンパ節郭清・・・がんの周辺にある転移リスクのあるリンパ節を切除すること

腎がんについては、ロボット支援下手術を導入することでこれまで開腹手術で行っていたケース、部分切除ではなく腎を全摘するケースがありましたが、より機能を温存するロボット支援下腎部分切除術を行うケースの割合が増えてきています。それはつまり、機能を温存し、負担の少ない手術が可能となってきているということです。膀胱がんについても、これまで腹腔鏡下に行っていたノウハウを生かし、ロボットの特性を加えることでより負担の少ない術式に改良されています。

よくある質問(Q&A)

  • Q 誰でもロボット支援手術が可能でしょうか。

    ほとんどの方は手術可能です。年齢で基準は設けずに、患者さん一人一人の持病や臓器の障害度(いわゆる内臓年齢)から適応を考えています。例外的に、前立腺全摘および膀胱全摘を受けられる場合には、これまでに頭の手術を受けられた方や緑内障の一部の方ではロボット支援手術は控えた方がいいと考えられています。

  • Q ロボット支援手術の待ち時間はどの程度でしょうか。

    前立腺全摘、腎部分切除、膀胱全摘ともに、状況にもよりますが1ヶ月以内に予定を組ませて頂いております。

  • Q ロボット支援手術の入院期間はどのくらいでしょうか。

    前立腺全摘や腎部分切除では、通常手術前日に入院していただいております。術後は前立腺全摘では10日間程、腎部分切除では7日間程のリハビリ期間を経て退院としています。膀胱全摘の場合には術前2-3日前から入院していただき、術後2週間弱のリハビリ期間を経て退院としています。

  • Q まだ働いていますが、職場復帰はいつ頃から可能でしょうか。

    退院時には、傷の痛みはほとんど軽快しております。事務的な内容がメインのお仕事であればすぐにでも復職可能です。前立腺全摘では術後の尿漏れも術後3ヶ月で70%、術後半年で90%以上の方が回復しています。

  • Q 退院後の通院はどのようなスケジュールでしょうか。

    退院後、2週間から1ヶ月程で外来を受診していただき創部の確認や採血で腎機能の確認、前立腺全摘の場合には排尿の状態を確認します。また、顕微鏡的検査結果(病理結果)をご説明致します。その後は、腎がん、膀胱がん、前立腺がんでそれぞれ異なりますが追加治療の必要性を判断し、不要な場合には3ヶ月に1度の定期的な外来通院となります。

執刀医から

前立腺がんには手術、放射線、薬物と様々な治療法があります。そのため当院では放射線治療科、臨床腫瘍科と連携をとり、患者さんの希望も加味して一人ひとりに最適な治療法をご提案しています。その中で我々泌尿器科は手術を中心に診療を行っております。前立腺手術に限りませんが、古くは開腹手術から始まり、腹腔鏡手術もいち早く導入して参りました。そして、現在当科では前立腺がん手術、腎部分切除術そして膀胱全摘除術のほぼ100%をロボット支援下手術で行っております。近年高齢化により循環器、呼吸器、腎臓などにご病気をお持ちの患者さんが増えています。手術をする上でリスクが高くなり、他院では手術困難な方でも当院では手術が可能な場合もございます。それは、虎の門病院が総合病院であり、内科、麻酔科をはじめ様々な診療科の医師や医療従事者と協力体制が整っているからです。当院で手術を受けられる患者さんに安心安全で高度な医療をご提供できるよう日々努力しています。我々が患者さんの泌尿器科「がん」治療のお役に立てれば幸いです。

    泌尿器科部長 浦上 慎司

医長 阪口 和滋

医員 岡 優

外来受診のご予約

受診には診療情報提供書(紹介状)が必要になります
紹介予約(医療機関用)TEL:03-3560-7823
紹介予約(患者さん用)TEL:03-3560-7690

PAGE TOP