脊椎センター

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はじめに

整形外科の中でも特に多い脊椎脊髄疾患の専門的な診療を行うため、虎の門病院では平成31年2月1日より脊椎センターを開設致しました。
近年高齢者の増加に伴い、骨・関節・筋肉などの運動器の疾患を扱う整形外科の患者さんも増加しております。特にその中でも脊椎は変性を来たしやすく様々な症状を引き起こします。そのため脊椎についての高い専門的知識とそれに応じた技能が求められるようになってきており、脊椎を専門に特化した医師がその疾患の診断ならびに治療にあたり、より高度な水準の医療を提供することを目指し発足致しました。
脊椎の中には脊髄神経が通っておりますが、様々な原因でこの神経が障害され症状をきたします。これにより痛みやしびれで日常生活が不自由になり、悪化すれば手足の麻痺が生じてしまうこともあります。具体的には椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症などの変性疾患や脊椎の外傷・腫瘍、最近では骨粗鬆症に伴った圧迫骨折などが疾患対象になります。
治療は薬物療法やブロック療法といった保存治療を優先し、これらで十分な効果が得られず日常生活に影響を来たしている場合には手術治療を選択します。手術治療に当たってまず当科では十分に責任部位の診断を行います。症状を引き起こしている部位をピンポイントで見つけ出すことができれば、手術ではその部位のみをできるだけ小さい傷口で、体に対する負担の少ない方法(低侵襲)で行い早期の社会復帰を目指しています。

最も多いとされる椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術を当院は全例内視鏡を用いて行なっております。脊椎内視鏡手術は創が小さく術後の痛みが少ない、手術の翌日から歩行可能で早期の退院が可能であることなど利点の多い手術です。身体への負担も従来の方法に比べると大幅に少なくすむため、手術のための入院期間は1週間程度です。術前に的確な診断を行うことができれば、手術により症状の改善を得ることができます。

内視鏡と従来の手術の比較

扱う主な疾患

【腰椎椎間板ヘルニア】

骨と骨の間をつなぎとめる組織を椎間板といい、椎間板はクッションの役目をしています。その一部が変性などに伴い出てきて神経を圧迫することで症状を来たします。症状がさほど強くなければ投薬や神経ブロックを行い保存的に治療します。筋力の低下や排尿障害を来した場合、また保存的治療を行っても日常生活に強く影響を生じている場合は手術を行います。手術は内視鏡手術の良い適応です。

【腰部脊柱管狭窄症】

脊柱管は背骨や椎間板・靭帯などに囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。これが変性した椎間板・背骨・靭帯などにより神経が圧迫されることで、神経の血流が低下し症状を来たします。安静にしていればほとんど症状はありませんが、立ったり歩いたりすることで血流の低下を生じ、足がしびれてしまい歩けなくなることや、排尿障害を来たすこともあります。始めは投薬やブロック治療を行いますが、それでも症状が進行する場合は手術を行います。手術は通常であれば内視鏡手術の適応です。

【腰椎変性すべり症】

腰の骨がすべる、すなわちずれることにより腰部脊柱管狭窄症と同様の症状を来たします。治療についても脊柱管狭窄症と基本は同様ですが、変性が強い場合にはインプラント(背中にいれるスクリューや背中をつなぐ金属)を使用し背骨を固定する手術を行うこともあります。変性すべり症は必ずしも固定する必要はありませんので、それぞれの症状に応じて十分に術式は検討します。また固定する手術も状況に応じて内視鏡での手術が可能です。

【頚椎症性脊髄症】

加齢変化による椎間板や骨の変性などにより、首の骨の脊髄(神経の本幹)の通り道が狭くなることで神経が圧迫されて症状が出ます。日本人は脊柱管の大きさが欧米人に比較して小さく、その症状が生じやすくなっています。一度脊髄の症状を来すと手指の動きが悪くなったり、歩くときにふらふらしてしまい歩行障害を生じます。さらに進行すると排尿障害も来たします。脊髄症は神経の本幹の障害であるため症状は進行性です。そのためタイミングを見計らって神経を広げる手術を行います。狭くなっている原因や場所を十分に検討した上で首の前からのアプローチや、後から内視鏡でアプローチするなどしてなるべく低侵襲での手術を心がけています。

【頚椎椎間板ヘルニア】

腰のヘルニアと同様に椎間板が主に加齢変化により後方に飛び出すことによって起こります。30~50歳代に多く、しばしば誘因なく発症します。悪い姿勢での仕事やスポーツなどが誘因になることもあります。飛び出す場所により、神経根(神経の本幹から出た枝の神経)の圧迫、脊髄(神経の本幹)の圧迫あるいは両者の圧迫が生じます。神経根の症状であれば投薬などが有効ですが、筋力の低下や強い痛みが持続する場合は手術治療を行います。神経根のみの手術であれば内視鏡手術の非常に良い適応になります。

【脊椎圧迫骨折・破裂骨折】

骨粗鬆症が原因で生じた場合は症状が軽度のことがありますが、尻餅などあきらかな外力が原因の場合は通常は骨折部に痛みを生じます。いくつもの場所に骨折を生じると背中が曲がってきてしまう原因となり、身長も低くなります。多くの骨折の場合は、コルセットなどの外固定を行い比較的安静にする治療を行えば3~4週ほどで症状は改善します。骨折の変形が強かったり骨がつかない場合、またそれに伴って神経の圧迫をきたす場合は手術を要することもあります。骨粗鬆症に伴う骨折の場合は、それ以上他の背骨での骨折を生じないように、骨粗鬆症に対する治療で予防を行うことも非常に重要になってきます。

【がんの骨転移】

がん治療の進歩に伴い、骨転移を有する患者数が年々増加しています。当院のような地域がん診療拠点病院において、これらの患者さんの運動機能を維持・向上するための取り組みは、がんの治療を継続する上で重要です。こうした背景から、定期的に診療科横断的カンファレンスを行い、骨転移患者さんに対し病院全体としてより適切な治療を提供しています。

<骨転移カンファレンス> 2019年6月より毎月開催

また、がんロコモ*を予防するためには、定期的に身体を動かすことが大切です。
<骨転移に関する患者さん向け資料>こちらからどうぞ
“がんの治療を継続している間も運動して良いのか”、“どのような運動をどの程度行えばよいか”、など運動器についてお困りのことがあれば、ぜひ整形外科を受診して下さい。
*がんロコモ:がんに関連した運動器の障害により移動機能が低下した状態

診療体制

外来は月・火・水・金曜日に脊椎専門医が担当しています。当科を初めて受診される患者さんは、午前に前もって予約をとって受診なさってください。
診察ならびに適切な検査を行なった上で椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・脊柱変形などと診断された場合は、まず生活指導や投薬、ブロック療法などの保存療法を十分に行います。 それでもさらに治療が必要と判断された場合は、十分に検討を行った上で手術を行います。手術日は月・木・金曜日です。

特集

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