呼吸器センター外科
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1999年~2025年までの27年間に呼吸器センター外科では、10,959件の胸部疾患に対する手術を行い、うち10,376件(全体の94.7%)は基本3-port(3か所の創)胸腔鏡下手術のみで行った手術でした。最近の16年間では、1年間の手術件数と胸腔鏡下手術の割合は増加~平衡状態で、16年間で7,540件の胸部疾患に対する手術を行い、うち7,415件(全体の98.3%)が胸腔鏡下手術のみで行った手術でした。当科では2008年以降は、1年間に行う約400~550件の胸部疾患の総手術のうち、97%以上の胸腔鏡下手術の施行率を約20年間継続しております。また、最初から最後まで胸腔鏡下手術のみで行う割合(完遂率)も、最近16年間では99.7%(開胸移行率が0.3%以下)でありました。これらの長い期間での当科での実績により、上記の様々な疾患に対しても胸腔鏡下手術の適応を徐々に拡大し、安全かつ的確に手術を行っておりますので、いつでもご相談して頂けると思います。我々にとって胸腔鏡下手術は一般的で常に行っている手術であり、現在はロボット手術(ダビンチ手術など)との共存(ロボット支援胸腔鏡手術)も、保険適応症例に対しては行っており2024年3月までに94件施行しております。当科でのロボット手術の特徴は、ロボット手術でも創部数が胸腔鏡下手術と同様に3ヵ所のみであることです。
2025年1月~12月の1年間での虎の門病院呼吸器センター外科での全身麻酔の手術件数は462件(2022年は433件,2023年は495件,2024年は471件)と、2019年からのコロナ流行下でも豊富な手術件数を維持しながら、更にコロナ流行の改善と共に様々なクリニック、病院、大学より紹介を頂き、最近4年間では特に手術件数は増加傾向です。うち3-port(3か所の創で行う)胸腔鏡下手術(含ロボット支援胸腔鏡下手術)で行った手術は454件(全手術の98.3%)と大半を占め、胸腔鏡下手術の完遂率(最初から最後まで胸腔鏡下手術で問題なく完遂した手術率)は99.6%でした。また両側肺疾患に対する両側同時一期的胸腔鏡下手術症例は32例(7.5%)、ダビンチ支援胸腔鏡下手術は21件(4.5%)でした。疾患別手術件数は、原発性肺癌・肺悪性腫瘍は223件、転移性肺腫瘍は82件、胸腺腫などの縦隔腫瘍(含:重症筋無力症の手術)は36件、膿胸を含む感染症などの炎症性肺疾患は54件、気胸・嚢胞性肺疾患は41件などと、どの疾患の手術をとっても全国でも有数の症例を有しています。
当科の特徴としては、人間ドックで発見された特に合併疾患のない方の早期の肺癌から、癌の専門病院では十分に診療できない、透析中、心血管疾患治療中、間質性肺炎やぜんそく、肝障害など他の全身疾患治療中などの困難症例の肺癌手術など、さまざまな患者さんの肺癌手術に対応しているという点です。これは97%以上の手術を低侵襲の胸腔鏡下手術で行っているという点と、総合病院の特徴を生かして、専門の他科と良好な連携を取っているからです。また最近では、非常に小さい腫瘍や、多発する両側肺腫瘍に対しても、術中自走式CT(ハイブリット手術室)を併用することで、前処置やそれに伴う合併症がない状況下で、より低侵襲な胸腔鏡下手術を実現しています。外来初診時から約7~14日で手術が可能であり、手術後順調に経過すると、肺癌の標準的な治療である肺葉切除術と系統的リンパ節郭清を胸腔鏡下手術で行い術後3~6日で、縦隔腫瘍手術は術後2~3日、気胸手術では2日で退院し社会復帰することができます。

胸腔鏡下手術中の術野写真(3か所の創部で3mm細径鉗子等を使用した手術)

創部はより細径な3mmの創部と鉗子を主で胸腔鏡下手術を行います(Needlescopic Surgery)。術後の創部写真(下部の創はその創より肺や病変を袋に入れ摘出するため病気の大きさ(肺葉切除の場合は2~3.5cm程度)により異なります)

現在の保険適応疾患(肺葉切除術、区域切除術、縦隔腫瘍手術、胸腺全摘手術等)のみに行っております(da Vinci手術)。当科の特徴はロボット支援下胸腔鏡下手術でも創部が3か所であることです。

2025年4月より、当院に呼吸器センター内科が中心に我々呼吸器センター外科や他の様々な診療科との協力のもと、間質性肺疾患包括治療センターを開始することができました。今まで以上に、間質性肺炎を伴った患者さんに対する診療に、多方面の診療科からのサポートが受けられるようになりました。特に呼吸器センター外科領域では、間質性肺炎を合併する肺癌患者さんに対する外科的治療により幅広く対応することができるようになりました。間質性肺炎を伴うと、肺癌に対して抗癌剤治療や放射線治療が行いづらく、また手術(胸腔鏡下手術)でのリスクを伴うことがありますが、我々の実績のある低侵襲な胸腔鏡下手術での経験と様々なサポート下で、より安全に手術を行うことが可能となりました。間質性肺炎があるため、手術療法や追加治療が不可能 と診断されてしまった方々は、是非ご相談ください。
詳細は以下のリンクをご参考ください
1999年4月前部長の河野匡先生が虎の門病院に赴任されて以降、我々は低侵襲である胸腔鏡下手術を様々な疾患に対して積極的に行い、年間500件前後の手術件数、胸腔鏡下手術施行率(全手術中の胸腔鏡下手術の比率)97%前後、開胸移行率0.3%以下を保ちつつ、更なる手術の適応拡大と沢山の外科医を育ててまいりました。その結果2025年に、胸腔鏡下手術件数(含ロボット支援胸腔鏡下手術)の総数が10000件を超えることができました。
10000件の胸腔鏡下手術を行うためには、呼吸器センター内科、病理科、放射線科、放射線治療科、その他の診療科、看護師、臨床工学士、薬剤師、事務の方々、そして当科に紹介して頂いた他の病院やクリニックなどの協力があってのことであり、誠に感謝しております。簡単ではありますが、2025年12月21日に、KKRホテル東京にて、当院で様々なサポートを頂いた方々(小規模に院内関係者のみでの開催としております)に簡単なお礼の会を開くことができました。今後も我々は、1人でも多くの患者様を救うべく、日々より低侵襲な手術を中心に努力していきますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。

当院では、最新の画像解析技術を活用した手術支援システム「REVORAS」を導入し、肺手術の安全性と精度向上に取り組んでいます。従来のCT画像は平面的(2次元)な情報のみでしたが、この高解像度の3D再構築技術により、患者さん一人ひとりの肺の構造を立体的に把握できるようになりました。このシステムと我々の行う胸腔鏡下手術の実績より、より精度の高い低侵襲な手術(特に肺区域切除術など)を提供することが可能となりました。
①"立体的な肺の地図"の作成
REVORASを用いることで、肺動脈(PA)・肺静脈(PV)・気管支(Br)の走行を高精細な3D画像として再構築することが可能です。これにより、胸腔鏡下手術を行う前に、・血管や気管支の分岐の個人差を事前に把握、・安全な切離部位の確認、・手術シミュレーションの実施
がより可能になります。1人1人の個人差を可視化することで、いわば、「患者さん専用の立体的な肺の地図」を作成してから手術に臨むことができるようになりました。
②"造影剤を使用できない患者さんにも"3D再構築
従来、血管走行を正確に把握するためには造影剤を使用したCT検査が必要とされていました(現在も主流です)。しかし近年の画像解析技術の進歩により、単純CT(造影剤を使用しないCT)画像でも、3D再構築が可能となりました。これにより、造影剤アレルギーのある方、腎機能への影響が懸念される方、喘息のある方でも造影剤を使用せず、術前の精密な画像解析が可能となりました。様々な患者さんへの負担を軽減しつつ、安全性を確保できる体制を整えています。
③"より精度の高い解剖学的肺切除"
立体的な解剖を術前に正確に把握できることで、従来以上に精度の高い解剖学的切除が可能となりました。さらに3D画像をチーム全体で共有し、共通の立体的イメージを持って手術に臨むことで、手術の安全性と再現性が向上しています。さらに当院の自走式CTを備えたハイブリッド手術室を併用することで、より切除範囲をより適正に判断し、**必要十分な範囲での肺切除(より低侵襲な治療)**を提供しております。

検診等の充実や早期発見早期治療により、より小さい腫瘍や多発する肺腫瘍に対する手術が増えてきました。胸腔鏡下手術とは非常に傷が小さく侵襲の少ない良い手術ですが、開胸手術(胸腔内に手を入れて行う手術)に比して、胸腔内の肺や腫瘍を直接触診できない欠点がありました。今までその欠点を補うために切除肺腫瘍の正確な場所把握のための手術前処置として、様々なCT下のマーキング法の併用や、少し傷を大きくし指で触診するなどの対応が行われていました。当院では2019年の新病院始動と共に手術室が一新され、日本ではまだ数の少ない自走式CTを併用したハイブリット手術室が導入されました。C-アームやO-アームのCTより画像解像度がよく被爆も少なく、小さい腫瘍でも術中に十分に確認しながら胸腔鏡下手術が行えるようになったため、合併症や時間を伴う手術前の処置が必要なくなり、より傷の小さい低侵襲な胸腔鏡下手術での切除が可能となりました。2019年の新病院開始以降2025年12月までに虎の門病院呼吸器センター外科では、697症例(924件数(含両側疾患))に対して、この自走式CTを併用した安全かつ侵襲の少ない胸腔鏡下手術での正確な切除を皆様に提供することができています。早期発見の小さい肺癌への手術、両側多発転移性肺腫瘍への手術(9か所以内)等に対する胸腔鏡下手術がより安全かつ的確に行うことが可能となりました。