整形外科

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メッセージ

整形外科疾患の多くは、致命的でないものの生活動作に支障をきたすものです。したがって、治療法(手術/非手術)の選択に際しては患者さんの決定権が優先されることになります。当科では、患者さんの要望、社会的・身体的背景を考慮のうえ最も適した治療計画を提示し、十分納得いただいたうえで治療をすすめるよう心がけています。

扱う疾患

整形外科は、体の中で頭部より下の部位の骨・筋肉・神経を専門としています。なお、当院では2022年より外傷センターが設立され、骨折や脱臼などの外傷(けが)の手術については主に外傷センターが担当しますが、整形外科も協力して治療にあたっています。

関節疾患

変形性関節症

関節の軟骨が擦り減り、変形が生じて痛みや機能障害が起こります。とくに、体重を支える下肢の膝関節や股関節に多く生じます。原因として加齢による老化などが挙げられますが、変形性股関節症は日本人では小児期の先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全から二次的に発症する場合が多いとされています。

関節リウマチ

関節リウマチは自己免疫疾患の一種で全身の関節や内臓に炎症病変を生じうる疾患です。炎症を生じた関節の軟骨や骨の破壊、変形が起こります。

大腿骨頭壊死症

大腿骨の付け根の丸い部分(大腿骨頭)への血流が低下し、骨の一部が壊死した状態です。壊死した骨は壊れやすくなっており、骨の破壊や変形が進行すると痛みや機能障害が生じます。

膝関節特発性骨壊死

膝関節の体重がかかる部分の一部で血流が低下し、骨の一部が壊死した状態です。近年では、関節軟骨のすぐ下の部分に生じた小さな骨折のあとと推測されています。体重がかかるときだけでなく、夜間に痛むこともあります。

脊椎疾患

腰椎椎間板ヘルニア

骨と骨の間をつなぎとめる組織を椎間板といい、椎間板はクッションの役目をしています。その一部が変性などに伴い突出することで神経を圧迫することで症状を来たします。症状がさほど強くなければ投薬や神経ブロックを行い保存的に治療します。筋力の低下や排尿障害を来した場合、また保存的治療を行っても日常生活に強く影響を生じている場合は手術を行います。手術は内視鏡手術の良い適応です。

腰部脊柱管狭窄症

脊柱管は背骨や椎間板・靭帯などに囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。これが変性した椎間板・背骨・靭帯などにより神経が圧迫されることで、神経の血流が低下し症状を来たします。安静にしていればほとんど症状はありませんが、立ったり歩いたりすることで血流の低下を生じ、足がしびれてしまい歩けなくなることや、排尿障害を来たすこともあります。始めは投薬やブロック治療を行いますが、それでも症状が進行する場合は手術を行います。通常であれば内視鏡手術の適応です。

腰椎変性すべり症

腰の骨がすべる、すなわちずれることにより腰部脊柱管狭窄症と同様の症状を来たします。治療についても脊柱管狭窄症と基本は同様ですが、変性が強い場合にはインプラント(背中にいれるスクリューや背中をつなぐ金属)を使用し背骨を固定する手術を行うこともあります。必ずしも固定する必要はありませんので、それぞれの症状に応じて十分に術式は検討します。また固定する手術も状況に応じて内視鏡での手術が可能です。

頚椎症性脊髄症

加齢変化による椎間板や骨の変性などにより、首の骨の脊髄(神経の本幹)の通り道が狭くなることで神経が圧迫されて症状が出ます。日本人は脊柱管の大きさが欧米人に比較して小さく、その症状が生じやすくなっています。一度脊髄の症状を来すと手指の動きが悪くなったり、歩くときにふらふらしてしまい歩行障害を生じます。さらに進行すると排尿障害も来たします。脊髄症は神経の本幹の障害であるため症状は進行性です。そのためタイミングを見計らって神経を広げる手術を行います。狭くなっている原因や場所を十分に検討した上で首の前からのアプローチや、後ろから内視鏡でアプローチするなどしてなるべく低侵襲での手術を心がけています。

頚椎椎間板ヘルニア

腰のヘルニアと同様に椎間板が主に加齢変化により後方に飛び出すことによって起こります。30~50歳代に多く、しばしば誘因なく発症します。悪い姿勢での仕事やスポーツなどが誘因になることもあります。飛び出す場所により、神経根(神経の本幹から出た枝の神経)の圧迫、脊髄(神経の本幹)の圧迫あるいは両者の圧迫が生じます。神経根の症状であれば投薬などが有効ですが、筋力の低下や堪え難い痛みを生じる場合は手術治療を行います。神経根のみの手術であれば内視鏡手術の非常に良い適応になります。

頚椎後縦靭帯骨化症

背骨の骨と骨の間は靭帯で補強されています。後縦靭帯は神経の前方に位置しますが、靭帯が分厚くなり骨のように硬くなってしまう病態です。これにより、頚椎症性脊髄症と同様に神経の本幹が障害され脊髄症を来たします。症状は進行性であるため、一度症状をきたすと手術をするタイミングが非常に重要になります。

脊椎圧迫骨折・破裂骨折

骨粗鬆症が原因で生じた場合は症状が軽度のことがありますが、尻餅などあきらかな外力が原因の場合は通常は骨折部に痛みを生じます。いくつもの場所に骨折を生じると背中が曲がってきてしまう原因となり、身長も低くなります。多くの骨折の場合は、簡易コルセットなどの外固定を行い比較的安静にする治療を行えば3~4週ほどで症状は改善します。骨折の変形が強かったり骨がつかない場合、またそれに伴って神経の圧迫をきたす場合は手術を要することもあります。骨粗鬆症に伴う骨折の場合は、それ以上他の背骨での骨折を生じないように、骨粗鬆症に対する治療で予防を行うことも非常に重要になってきます。

脊髄腫瘍

稀ではありますが背骨自体や背骨に覆われた神経にも腫瘍を生じる場合があります。多くの場合は良性腫瘍であることが多いので、症状がない場合は注意深く画像検索でのフォローを行います。腫瘍が進行し大きくなる場合や、腫瘍に伴って神経の症状をきたす場合は手術により摘出をします。

転移性脊椎腫瘍

体の別の臓器の癌細胞が背骨に運ばれて行き、そこで癌細胞が増殖して骨を破壊します。そうなる前に元の癌細胞を縮小させる治療を行いますが、それでも進行してしまうと破壊され弱くなった脊骨が負荷を支えられなくなると骨折を生じます。骨折の骨片や膨らんだ腫瘍によって脊髄が圧迫されると麻痺が生じます。癌を担当する科および患者さん・ご家族ともよく協議を行った上で、手術加療を行った方がいいと判断された場合には当科で手術を行います。

化膿性椎間板炎・脊椎炎

脊椎自体に細菌が付着しこれにより感染症を生じることがあります。症状は当初腰痛だけであることも多く見逃されることもありますが、細菌が原因と診断された場合は抗生剤による治療を行わなければなりませんので、早急に入院の上安静ならびに抗生剤による治療を行います。こうした治療を行っても細菌が波及し神経に影響を来たしたり、背骨の破壊が強く痛みを伴う場合は、手術によって細菌を排膿したり神経をよけることや、破壊された背骨にはこれを再建するためにインプラント(背骨に入れるスクリュー)を用いた手術を要することがあります。

診療体制

関節疾患については人工関節センター、脊椎疾患については脊椎センターがあり、それぞれの分野において経験豊富な専門医を中心としたチーム体制で診療にあたっています。また、治療の選択が難しい場合には整形外科全体のカンファレンスで検討して方針を決定しています。

特集

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