間質性肺疾患包括治療センター
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本ページでは2025年4月に新設された間質性肺疾患包括治療センターの概要をご案内いたします。「間質性肺炎」や「肺線維症」と診断を受けたまたはその可能性を指摘された患者さんが、専門的かつ包括的な医療を受けられるよう設立されました。
虎の門病院は総合病院として全身を診る全人的医療を理念に掲げるとともに、様々な臓器のがん診療に積極的に取り組んでおります。がん治療の過程においては「薬剤性肺障害」として間質性肺炎を発症することもあり、当センターではこうした肺合併症の診断・診療を担い、院内全診療科のがん治療を横断的に支援しています。
また本センターでは、呼吸器センター内科を中心に複数の診療科が連携するとともに、医師のみならず看護師、薬剤師、臨床工学技士、リハビリテーションスタッフなど多職種が協働し患者さんを中心とした医療とケアの提供に努めています。
間質性肺疾患は一般には十分に認知されているとは言えず、専門的に診療できる医師も限られているのが現状です。当センターは、診療科や職種の垣根を越えた体制のもと、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供することを目指しています。
患者さんが安心して前向きに治療に取り組めるよう、スタッフ一同尽力してまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
間質性肺疾患包括医療センター長
呼吸器センター内科 医長 宮本 篤
センター長:宮本 篤 (呼吸器センター内科)

当院では虎の門がんセンターとして、様々な診療科において様々な臓器のがん治療が積極的に行われています。肺のみならず様々な臓器のがんに免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬など新規の抗癌剤が承認され、内科的ながん治療における予後の延長に寄与しています。
一般的に慢性線維化性間質性肺炎(リンク:間質性肺炎)が合併していると、これらの有効な薬剤を使用すると呼吸不全を伴う薬剤性肺障害発症のリスクが増加します。治療開始時に肺合併症がない方でも薬剤性肺障害を発症することがあります。薬剤性肺障害は薬剤投与に伴う肺合併症で時にがん治療を中断させ、場合によっては呼吸不全により命の危険を伴う場合もあります。速やかに診断治療につながる様に、がん治療を行うすべての診療科からの相談窓口を設置しています。積極的に気管支鏡を実施、気管支肺胞洗浄やクライオ生検を実施し、肺の評価を行い治療を提案し、肺がんの患者さんのみならず、すべてのがんの患者さんに対してベストなケアが行えるようにします(図2 リンク:気管支鏡検査)。ひとたび薬剤性肺障害を起こすと、一度改善しても再投与できるとは限りません。有効ながん治療を継続できるかどうかは、重要な問題です。担当の診療科の医師と十分に話し合い、各診療科のがん治療がなるべくスムーズに行われる様サポートしています。
慢性間質性肺炎(リンク:間質性肺炎)が合併すると、特に重症例では呼吸機能検査において異常をきたし、全身麻酔そのものが可能かどうか検討する必要があります。呼吸機能検査で全身麻酔が可能と判断されても、手術後急性増悪という厄介な合併症をきたすことがあります。主に肺手術で問題になりますが、肺切除を行わない腹部などの手術においても急性増悪が発症することがあり注意を要します。外科チームと当センターが連携し術前リスクの評価を行い、万が一の発症時には速やかに治療できる体制をとっています。

図2:クライオ生検
慢性間質性肺炎(リンク:間質性肺炎)には高率に原発性肺がんが合併します。
患者さんを積極的に受け入れ、抗がん剤をはじめとする内科治療を実施しています。原発性肺癌の治療では免疫チェックポイント阻害剤が治療成績を格段に向上させました。分子標的薬を使用できる患者さんの予後は延長し、QoLを保った生活が可能となりました。慢性間質性肺炎を合併すると、これらの薬剤を使うことで間質性肺炎の急性増悪を発症する場合があります。免疫チェックポイント阻害剤を使用できる場合とできない場合が想定されます。肺がんの治療戦略を専門的に議論し、そこに間質性肺炎管理の専門知識を合わせて高度な判断が求められます。
手術可能な間質性肺炎合併肺がんの患者さんを当院の呼吸器センター外科では積極的に受け入れ、手術してきました。事前にカンファランスを行い、抗線維化薬を術前に内服していただいたり、麻酔科と議論して麻酔のかけ方を工夫したり、術後急性増悪のリスクを減らす取り組みをしてきました。
間質性肺炎合併肺がんの治療は、肺がんと間質性肺疾患の専門知識の融合が重要で、さらに放射線診断科の医師にカンファランス(MDDカンファランス:多職種合議による診断カンファランス)に加わってもらい、チーム医療として診断・治療を行なっています(図3)。


現在多くの間質性肺疾患は根治できません。慢性間質性肺炎は徐々に進行し、肺が硬くなり一定の重症度になると息切れなどの症状が出ます。検診などで指摘されることもありますし、息切れなどの症状を精査する時に見つかることもあります。急性経過の間質性肺炎では数ヶ月〜数日で息切れが進行します。発熱などを伴う場合もあります。
当センターのように専門的に診療が可能な総合病院で、必要な薬剤を必要な時期におすすめし、進行を少しでも遅らせ、生活の質をなるべく長く担保できる様にすることが重要です。抗線維化薬は病気の進行を遅らせ、症状の出現を遅らせることができます。受診当初はすぐ治療の必要がないこともありますが、定期的に通っていただき精密検査を行うことで治療のタイミングを見定めます。
関節リウマチや強皮症といった膠原病に間質性肺炎が合併することがあります。リウマチ内科との密な話し合いのもとに、膠原病自体と間質性肺炎両方の診療・治療がスムースに行われる様に連携しています。
間質性肺疾患には肺がん以外にもIII群肺高血圧、肺気腫、気胸など様々な疾患が合併します。これらの疾患の発症の有無を的確に把握し、治療を提案します。特に肺高血圧症は近年治療が可能な疾患になりました。早期に発見し治療することで症状の軽減につながる可能性があります。循環器センター内科と連携し心臓カテーテルなどの専門検査を実施し、その結果を共有して治療内容を決定しています。
慢性間質性肺炎の急性増悪や膠原病に関連する急性発症の間質性肺炎では重篤な呼吸不全に至ることがあります。当センターはポリミキシンカラムを用いた血液浄化療法の指定施設ですので集中治療科や腎センター内科と連携し必要な治療にあたります。人工呼吸管理が必要と判断された場合には集中治療科(ICU)と連携します。
病気の進行とともに呼吸困難が増悪します。現在の内科的薬物治療は進行を遅らせ、生活に困るような症状の出現をなるべく抑えていくことですが、疾患の根治は難しい状況です。慢性期には在宅酸素療法が必要になる患者さんもいます。呼吸が苦しくなると食欲低下、痩せ(フレイル・サルコペニア)を伴うようになります。その結果日常生活が難しくなりますので、その前に時期に適切に在宅酸素療法を開始して低酸素による危険を回避しつつ、入院による強化リハビリテーションプログラムをお勧めすることがあります。また、通院環境が許す患者さんには入院リハビリテーションプログラム卒業後に通院による維持リハビリテーションプログラムを準備し、「痩せない」ことを目標とした栄養相談を併用して、慢性呼吸器疾患の在宅治療・生活支援を行っています。(図5)
当センターは厚生労働省の「難治性疾患対策事業 間質性肺疾患調査研究班」の協力研究施設であり、新薬の臨床試験や新規治療技術の開発に携わっています。どのような新薬治験があるかは時期によりますのでお問い合わせください。
間質性肺疾患の3年後の治療を見据えて、患者さんの役にたつ医療を提供することをモットーとしています。

図5
間質性肺疾患の診療は呼吸器センター内科だけでは成り立ちません。
診断は、臨床情報、HRCTなどの画像診断、時に病理生検をもとに、多職種合議による診断(MDD: multidisciplinary discussion)を実施します(図3)。呼吸器内科医をはじめとする臨床医、胸部放射線診断医、病理医の3者がカンファランスを行ってより適切な診断を提供しています。
治療においては超急性期〜慢性期〜終末期に至るすべてのstageに適切な医療をお届けします。そのためには、超急性期における集中治療科(ICU),腎センター内科との連携が不可欠です。ご高齢の患者さんも多いので、看護部、高齢者診療部、緩和ケア科、リハビリテーション科とも連携します。膠原病に合併する間質性肺炎はリウマチ膠原病内科、合併症治療として感染症は感染症内科、肺高血圧症は循環器センター内科といった多くの診療科と連携しています。在宅支援のために在宅酸素療法は臨床工学部、他に非薬物療法としてリハビリテーション部、栄養部さらに看護部、薬剤部と患者さん中心に全人的医療を支える体制をとっています。
当センターは診療科・コメディカルの診療部門の垣根を取っ払い、患者さんを中心とした治療を行うための組織横断的な集合体です。間質性肺疾患の治療に携わる、様々な診療科医師、スタッフ全員が患者さんのために必要な医療の充実を目指します。