臨床腫瘍科

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臨床腫瘍科

メッセージ

臨床腫瘍科は、Human-based Medicine (HBM)というスローガンの元、様々な悪性腫瘍(がん)の患者さんたちの治療にあたっております。
HBMとは、人を中心にした医療という意味ですが、我々は、これを「人を大切にする医療」と解釈しております。「人」というのは、患者さんはもちろんの事、そのご家族、ケアギバーの方々、他科の先生、看護師や薬剤師を始めとした医療従事者、ご病気を持たれていない社会の人々など多くの人を含んでおります。医療はひとりではできません。私たちは、抗がん剤や分子標的薬、免疫治療などのがん薬物療法と呼ばれる治療法の専門家ですが、がんの治療法には、その他に外科的治療、放射線治療、緩和治療など様々な治療が存在します。そして、それぞれの専門家と協力して、治療を実施する必要があります。
また、近年、薬物療法の開発は目まぐるしいものがありますが、それに伴い様々な副作用をマネジメントする必要性が出てきました。その中で、循環器、呼吸器、腎臓、肝臓、膠原病、整形外科など様々な分野の専門家、看護師や薬剤師、栄養士、リハビリなど他職種との連携が重要になってきました。まさに、患者さんを中心に専門家が集まり治療を行うという、人を中心にする医療が必要という事です。
虎の門病院は、一般総合病院であり、この専門家同士の繋がりが非常に密で強いという特徴があります。私たちは、虎の門病院におかかりになっているがん患者さんに、この時代になし得る最良のがん医療をチームとして提供することをミッションとして、日々の活動に取り組んでいます。

虎の門病院臨床腫瘍科(腫瘍内科)は、以下の4つの目標を掲げ、日本における「腫瘍内科」のモデルとなれるよう、様々な取り組みをしています。

理念

「この時代になしうる最良のがん医療を提供する」

診療

「各診療科と密接に連携して高度なチーム医療を行う」

教育

「真のオンコロジスト(がん医療専門家)を育成する」

研究

「質の高い臨床研究で世界にエビデンスを発信する」

診療面では、関連する診療科(乳腺・内分泌外科、消化器外科、泌尿器科など)と密接に連携しながら、一人ひとりの患者さんにとって最適な医療を提供します。また、がんという病気を抱えながらも、「希望」「安心」「幸せ」を感じられるように、患者さんの想いや価値観を重視する、「人間性に基づく医療(Human-Based Medicine; HBM)」を実践します。
教育面では、今はまだ少ない「腫瘍内科医」を育成することで、日本全体のがん医療の質の向上を目指します。
研究面では、臨床試験や新薬開発に積極的に取り組み、がん医療の発展に貢献します。

扱う疾患

臨床腫瘍科は、基本的に成人の全ての固形腫瘍に対応しておりますが、下記のがん種を多く診療しております。

  • 泌尿器がん
     腎がん、尿路上皮がん [膀胱がん、尿管がん、腎盂がん]、前立腺がん、胚細胞腫瘍 [精巣腫瘍など]、尿膜管がん
  • 消化器がん
     大腸がん、胃がん、食道がん、胆道がん、膵臓がん、肛門管がん、GIST
  • 乳がん
  • 原発不明がん
  • 軟部肉腫
     脂肪肉腫、平滑筋肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫
  • 頭頸部がん
     上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がん
  • 婦人科がん
     卵巣がん、原発性腹膜がん、子宮体がん、子宮頸がん
  • 肺がん
  • 神経内分泌腫瘍
  • その他
     発生頻度が低い稀な悪性腫瘍、診断がはっきりしない腫瘍、複数の悪性腫瘍が同時に発生した場合、合併症を有する方の悪性腫瘍など、対応が難しい疾患についても積極的に取り組んでいます。

診療体制

    • 化学療法
       臨床腫瘍科には、日本臨床腫瘍学会の認定する、がん薬物療法専門医が4名在籍しており、殺細胞性抗がん剤、分子標的薬、免疫療法、ホルモン療法などの様々ながん化学療法を専門的にマネジメントしています。
    • 外来化学療法室
       現在、ほとんどの化学療法が、外来通院で可能となりました。当院では、外来化学療法室にて看護師、薬剤師、栄養士などと協力しながら、化学療法を実施しております。(入院での化学療法が必要な方については、入院での投与を実施しております)
    • 抗がん剤副作用・合併症マネジメントセンター
       現在、新規薬剤の開発に伴い、これまでにない様々な副作用が見られるようになってきました。当院では、総合病院の特性を活かし、循環器科、内分泌・代謝科など様々な専門家が薬物療法の副作用やがんの合併症などに対応する体制をとっております。現在、腫瘍循環器外来、腫瘍糖尿病外来が稼働中ですが、今後他の領域も稼働していく予定です。
    • がんゲノム医療
       ゲノムとは遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体を意味します。すなわち、我々生物の身体の設計図のようなものです。種々の研究により、がんの原因の一つに細胞の何らかの遺伝子異常が絡んでいることがわかりつつあります。そのようながん細胞の遺伝子異常を調べることでその異常に応じた治療を個別に検討することを、がんゲノム医療に基づく個別化医療と呼んでいます。
      当院では、がんゲノム医療の際に必要となる「遺伝子パネル検査」を行っています。検査結果を東大病院と連携して吟味し、患者さんに説明・提供しております。
      理想的にはそこから治療に結び付けることになりますが、治療には結び付かないことの方が多いのが現状です。また、仮に治療に結び付いたとしてもその治療が適切な効果を示すかどうかも未知数な面があります。したがってがんゲノム医療・遺伝子パネル検査については、現存する最善の治療法である「標準治療」よりも優先して行う意義は現時点では乏しいことが多く、しっかりと標準治療を受けていただいた後に検討すべきであると位置づけております。
    • 治験・臨床研究
       未来のがん医療のさらなる発展のために、乳がん、腎がん、尿路上皮がん、前立腺がん、胃がん、大腸がんを中心に、新薬開発の国際共同治験、国内の医師主導治験などに参加しています。また、がん自体の性質(分子生物学、遺伝学、免疫学的な性質など)や、様々な薬物療法の効果や副作用のメカニズムの解明を目的とした臨床研究を、国内外の基礎研究施設とコラボレーションし、積極的に行っております。

*治験・臨床研究を検討する際の注意点
 上記のように、今後の医学の発展のためには治験・臨床研究は極めて重要です。ただしそれらはあくまで、まだ効果や安全性が確立されていない治療法の候補であり、最終的には現存する最善の治療法である「標準治療」よりも劣った治療法であるとの結論となり、開発が終了することもよくあります。治験・臨床研究に過剰な期待をすることなく、担当医の指示にしたがってまずは「標準治療」をしっかり検討することが、最終的に患者さんの利益に繋がる可能性が高くなることを念頭に置いていただければと思います。

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