集中治療科

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メッセージ

 集中治療科は中央診療部門として、消化器外科、循環器センター(外科、内科)、脳神経外科、間脳下垂体外科、脳神経血管内治療科、呼吸器センター、血液内科など各診療科と連携して集中治療室(ICUIntensive Care Unit)の重症患者管理と運営を行っています。
 令和時代の幕開けとともに移行した新病院のICUは十分な広さを持った特定集中治療室20床を擁しております。20195月の新病院移転時は14床の運用からスタートしましたが、コロナ禍のさなかに段階的に稼働病床を増やしました。20212月から全20(陰陽圧切り替え使用可能な隔離個室2床を含む)をフル稼働しています。202012月からICUと同じフロアに高度治療室(HCUHigh Care Unit) 8床の運用を開始しました。
 COVID-19パンデミックでは、20218月~10月にHCU/SCUを感染症臨時病棟(重症用)としてICUとは別に緊急運用し、都内で急増した重症COVID-19患者さんの救命に大きく貢献しました(これまでの人工呼吸装着COVID-19患者は70名以上)。
 当科では虎の門病院が誇る各部門のスペシャリストの叡智・技術を結集し、患者さんにとって最善の治療を実践することを目指しています。

扱う疾患

 集中治療室(ICU)は循環不全、呼吸不全、意識障害、腎障害、凝固障害などの臓器機能不全をきたしている重症の患者さんや、大手術後で厳重なモニタリングが必要な患者さんが入室の適応となります。集中治療とは、そのような患者さんを濃密な診療体制のもとで厳重に観察し、先進技術を駆使して治療していくものです。
 虎の門病院では、専門性の高い先進的な低侵襲手術、多くの合併症を抱えた患者さんに対する大手術、救命のための緊急手術など、多くの手術が実施されています。また、がん治療や造血幹細胞移植、臓器移植などの高度医療も多く実施されています。定時手術後のみならず、緊急手術後、救急搬送後、移植前処置や移植後の容体悪化など、さまざまな経緯で患者さんがICUに入室します。

診療体制

 虎の門病院集中治療科は20234月現在、常勤ICU専従医5名体制です(日本集中治療医学会認定集中治療専門医3名、麻酔科機構専門医・日本麻酔科学会指導医2名)。5名全員が救命救急センターでキャリアを積んでおり、4名が救急科専門医、2名が救急科指導医の資格を有し、厚い布陣で構成しています。当科は救急科専攻医の集中治療部門研修を担当しており、専門医プログラムの救急科専攻医もチームの一員として診療に携わっています。
 われわれは診療科の枠にとらわれない幅広い疾患の診療を得意とし、緊急事態にも的確に対応しています。人工呼吸器や透析などの高度生命維持装置の管理にも精通しており、主治医を務める各診療科医師や臨床工学技士らと連携して重症患者管理を担っています。各診療科・看護師・臨床工学技士・薬剤師・理学療法士・社会福祉士等を交えた多職種合同カンファレンスを毎日行い、みんなで情報共有して治療方針を議論・検討し、円滑なチーム医療を実践しています。ICU専任医師、臨床工学技士の常時勤務体制を整えており、特定集中治療室管理料1算定の認可を受けています。202010月に日本集中治療医学会専門医研修施設に認定されました。
 集中治療科は院内急変対応システム(RRSRapid Response System)のコアメンバーとして活躍しています。RRSとは入院患者さんの急変の前兆を早期に察知し、集中治療や蘇生を専門とするチームで迅速に対応・介入し、院内心停止や死亡を未然に防ぐためのシステムです。集中治療科・救急科が連携して24時間365日のRRS体制を確立しており、院内の安心・安全に貢献しています。
 呼吸療法サポートチーム(RSTRespiratory Support Team)の活動として、院内の人工呼吸患者の呼吸ケア、気道や呼吸に関するさまざまな問題などを討議して毎週病棟回診を行っています。また呼吸に関する院内教育でも活躍しています。
 虎の門病院ICUでは早期リハビリテーションに力を入れています。医師・看護師・理学療法士・言語聴覚士・作業療法士・臨床工学技士など多職種が連携して協働で実施しています。患者さんの長期的な機能予後や生活の質の改善、社会復帰を見据えて、積極的に体を動かしていく早期リハビリテーションは大変重要であると考えています。身体機能や日常生活活動(ADL)、せん妄、人工呼吸器装着期間が患者さんのアウトカムに良好な影響を及ぼすことが明らかになっています。重症な患者さんに適切な早期リハビリテーションを実施するためには安全確保が大前提で、身体に運動負荷を加える適応および禁忌、開始および中止の判断を的確に行う必要があります。大勢のスペシャリストが早期リハビリテーションを支えています。
 虎の門病院ICUJIPAD (日本 ICU 患者データベース、Japanese Intensive care PAtient Database. 参考 https://www.jipad.org/ )と呼ばれる日本集中治療医学会の運営する前向き症例登録事業(診療レジストリ)に参加しています。患者さんの疾病や重症度、治療内容、その結果など詳細な情報を集積して、集中治療医学への貢献と診療水準の質の向上の一翼を担っています。

集中治療医学を学ぶ方へ

 コロナ禍において集中治療医の存在と重要性は、以前と比較すると格段に広く社会的に認知されるようになりました。なぜなら、重症患者管理や人工呼吸器・血液浄化療法・ECMOなどの生命維持装置・高度医療機器に精通し、各診療部門の専門家やコメディカルと連携して診療するスペシャリストとして、集中治療医が重症COVID-19診療で重要な役割を果たしたからです。パンデミックや災害における危機管理、院内医療安全対策なども集中治療医の専門の一部であり、その分野では院内中央診療部門の一角をなす存在です。全国の病院で集中治療医を求める声は大きいのですが、まだまだ集中治療専門医の絶対数は不足しています。われわれは、ぜひとも若手医師に積極的に集中治療医学を学んで集中治療専門医取得を目指し、重症患者診療チームの仲間に加わってほしいと考えています。
 集中治療専門医は2023年で学会認定の旧制度による専門医申請は終了し、2024年より新制度による申請のみが可能となります。集中治療専門医資格の取得を目指している方は、指定学会の専門医資格を取得し、集中治療専門医研修施設において、1年以上の勤務歴と連続した24週以上の専従歴が必要です。専従に関しては救急外来等と兼務できず、ICUに集中した業務が必要です(参考 日本集中治療医学会ホームページ https://www.jsicm.org/ )。
 虎の門病院ICUは集中治療専門医研修施設であり、専門性の高い多くの術後患者、重症患者、救急患者、院内外緊急入室症例などをバランスよく経験することができます。深い経験がものをいう集中治療を学ぶうえで十分な症例数です。指導医らは救急・麻酔を基本領域としています。病態理解や診療手技、高度医療機器の取扱いなどに関して確かな指導を受け、集中治療医として急性期医療の現場で活躍していくための知識・技量を習得することが可能です。専門医申請に必要な学会報告や論文なども的確に指導します。東京大学附属病院救急・集中治療科や順天堂大学附属練馬病院救急集中治療科とも協力体制をとっています(1名は大学院在籍中)。
 脳神経、循環器、消化器など各専門分野に進む前に総合的な全身管理や集中治療を学びたいという方にICU研修はおすすめです。将来どの道に進んだとしても集中治療研修における診療経験や獲得技量は医師としてアドバンテージを産み出すでしょう。
 虎の門病院集中治療科は皆さまと共に集中治療を学び、共に成長できることを楽しみにしています。

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