内分泌センター

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理念

内分泌疾患の総合的診療を有機的に行います

小児から高齢者まで内科的治療から手術治療まであらゆる領域で充実したスタッフにより患者中心の医療を最高の水準で提供することをめざします。

扱う疾患

  • 成長・思春期の異常
    成長障害、ターナー症候群、思春期早発症など
  • 間脳下垂体疾患
    下垂体腫瘍(クッシング病、先端巨大症、プロラクチン産生腫瘍など)、頭蓋咽頭腫など
  • 甲状腺疾患
    バセドウ病、甲状腺機能低下症、慢性甲状腺炎(橋本病)、甲状腺腫瘍など
  • 副腎疾患
    原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫/パラガングリオーマ、副腎腫瘍など
  • 性腺機能異常
  • 副甲状腺疾患(カルシウム代謝異常)
    副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、ビタミンD依存症など
  • 代謝性骨疾患
    骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、ファンコニ症候群など
  • 内分泌性高血圧症
  • 膵内分泌腫瘍
    インスリン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍など
  • その他

一般の方々へ

内分泌センターは内分泌代謝科(内分泌部門)、小児科、間脳下垂体外科、耳鼻科、泌尿器科との連携で構成されています。受診に際しては各科のページをご覧になり、問い合わせください。

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紹介方法について

患者さんご自身または医療機関から各部門の初診予約をおとりください。紹介状を持参の上、受診いただくよう患者さんにお伝えください。

事前に休診の有無を必ずご確認下さい。

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※ 一般の方々からのメールによるご相談はお受けしておりません

内分泌疾患(ホルモンの病気)とは?

内分泌疾患は大きく3つに分類されます。

  • ホルモンが過剰である(甲状腺機能亢進症など)
  • ホルモンが不足である(甲状腺機能低下症など)
  • ホルモンは正常だが、内分泌臓器に腫瘍がある(脳下垂体、甲状腺、副腎など)

これらの疾患は、正しく診断されれば、ほとんどの場合に適切な治療が可能となります。
ここでは、比較的頻度の高い、また当センターで頻繁に診療する内分泌疾患についての簡単な説明をいたします。

先端巨大症

1. どのような症状がみられるのか?

  • 手や足が厚ぼったくなり、指輪が入らなくなり、靴のサイズが大きくなります。指先が特に太くなります。
  • 顔つきも厚ぼったくなります。特に、鼻翼や口唇が厚くなります。眉間が盛り上がってきます。
  • 前歯の間が空いてきます。
  • 皮膚のすぐ下を通っている静脈が浮き出てきます。
  • しつこい頭痛が続くことがあります。
  • 脂っこい汗が多くなります。
  • 高血圧、糖尿病、心肥大をしばしばおこします。
  • 睡眠時無呼吸症候群の原因となることがあります。

2. どのような病気なのか?

  • 脳の下垂体にできた腫瘍から成長ホルモンが過剰に分泌されることによりおこる病気です。
  • この下垂体の腫瘍のほとんどは良性の腫瘍です。
  • 顔や手足の症状は直接には生命に影響しませんが、この病気の方は、高血圧、心肥大、糖尿病の治療が困難であることから積極的な治療が望まれます。

3. どのように治療するのか?

  • 可能な限り、外科的に腫瘍を摘除します。一般的には、鼻から内視鏡を挿入し、鼻の奥でトルコ鞍(下垂体のあるところ)の骨を除去して下垂体に到達し腫瘍を取り除きます。
  • 完全に腫瘍の摘除ができず、成長ホルモンの過剰状態が残ってしまった場合には、薬物治療を併用します。場合によっては、放射線療法(γナイフなど)を行うこともあります。
  • 薬物治療には、内服薬(カベルゴリンなど)と注射(オクトレオチドなどのソマトスタチンアナログ)があります。一般的には、注射薬の方が効果が高いことが多く、月に1回の注射を継続します。
  • 治療が奏功すると、高血圧や糖尿病に改善がみられます。また、自覚症状もはっきりと改善します。顔や手足の症状も改善しますが、すでに骨に変化がおこっている部位については完全には良くなりません。

クッシング病

1. どのような症状がみられるのか?

  • 満月様顔貌(頬がふくらんだようになる)、にきび、体の中心部(頬、首、鎖骨の上、お腹など)の肥満、薄く傷つきやすい皮膚、あざが出来やすい、むくみ、うつなどの精神症状。
  • 腎臓結石による痛みや血尿、骨粗鬆症による骨折。
  • 高血圧、糖尿病をしばしばおこします。

2. どのような病気なのか?

  • 脳の下垂体にできた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) が過剰に分泌され、その結果、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることによりおこる病気です。
  • この下垂体の腫瘍のほとんどは良性の腫瘍です。
  • 同じような病気でも、下垂体以外の腫瘍からACTHが分泌されている場合があり、適切な診断が重要になります。
  • この病気の方は、感染に対する抵抗力が弱く、一旦罹ると重症化しやすいという問題があります。また、高血圧、糖尿病の治療が困難であることや「うつ」のために治療が必要になる場合もあることなどから積極的な治療が望まれます。

3. どのように治療するのか?

  • 可能な限り、外科的に腫瘍を摘除します。一般的には、鼻から内視鏡を挿入し、鼻の奥でトルコ鞍(下垂体のあるところ)の骨を除去して下垂体に到達し腫瘍を取り除きます。
  • 完全に腫瘍の摘除ができず、ACTHの過剰状態が残ってしまった場合には、薬物治療を併用します。場合によっては、放射線療法(γナイフなど)を行うこともあります。
  • 薬物治療には、注射薬として月一回のパシレオチドや、内服薬としてカベルゴリンや副腎皮質ホルモン合成阻害薬などがあります。しかしながら、薬物治療や放射線療法で良好な状態を維持することは困難であることが多く、出来る限り手術で腫瘍を取りきるようにつとめます。
  • 治療が奏功すると、多くの症状や異常は改善します。しかしながら、手術後しばらくはACTHの正常な分泌が回復せず、手術前とは逆に副腎皮質ホルモンの不足状態になりますので、半年くらいはお薬(副腎皮質ホルモン、糖質コルチコイド)を内服する必要があります。

プロラクチン産生腫瘍

1. どのような症状がみられるのか?

  • 女性と男性で症状が異なります。
  • 女性では月経がなくなり、乳汁が分泌されやすくなります。自然に乳汁がにじんでくる場合もあれば、手で絞ると少量の乳汁が出てくる場合もあります。また、このような症状がなくても、不妊の原因となっていることがあります。
  • 男性では目立つ症状はありませんが、性欲の低下を認めることがあります。男性では症状が目立たないので、腫瘍が大きくなり視神経を圧迫するまでになり、視野狭窄をおこして初めて発見されることがしばしばあります。
  • 男女ともにこの病気により骨粗鬆症になりやすくなります。

2. どのような病気なのか?

  • 脳の下垂体にできた腺腫からプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)が過剰に分泌されることによりおこる病気です。
  • この下垂体の腫瘍のほとんどは良性の腫瘍です。
  • 下垂体に腫瘍がなくても胃薬や吐き気止めなどのお薬がプロラクチン過剰の原因になることがあるため注意が必要です。

3. どのように治療するのか?

  • その他の下垂体腫瘍と異なり、内服薬の治療効果が高いため必ずしも手術による腫瘍摘除が必要となるわけではありません。このため、まずは内服薬で治療することが多い病気です。
  • 内服薬にはカベルゴリン、ブロモクリプチンがあります。吐き気やふらつきなどを起こしやすい薬なので、少量から慎重に始めます。カベルゴリンは週1~2回の内服で効果の得られることが多く、内服しやすい薬です。
  • 治療が奏功すると、プロラクチンの血中濃度が改善するばかりでなく、腫瘍も小さくなることが期待できます。

中枢性尿崩症

1. どのような症状が見られるのか?

  • 昼夜を問わず多量の尿が出て、著しく喉が渇き、冷たい水をたくさん飲みます。冷たい水が飲みたくなるところがこの病気の特徴です。
  • 一日の尿量が3リットルを超えます。ふつうは5リットル以上になります。
  • ある日、突然に発症することが多いとされています。
  • 水分を摂らなければどんどん体重が減っていきます。

2. どのような病気なのか?

  • 脳下垂体の後葉という部分から分泌される抗利尿ホルモンが不足することで起こります。
  • 病気の原因は脳下垂体付近の腫瘍や炎症など多彩で、また脳下垂体の手術後におこることもあります。
  • 精神的な問題で、多量の水が飲みたくなるときも同様の症状が表れることがあります(心因性多飲症)。抗利尿ホルモンの不足による本当の尿崩症との区別は困難であることが多いため、入院して精密な検査が必要になります。

3. どのように治療するのか?

  • 原因が治療により軽快しても抗利尿ホルモンの分泌が回復せず多尿が続くことが多いため、抗利尿ホルモン作用のあるお薬を服用します。
  • 抗利尿ホルモン作用のあるお薬(デスモプレシン)を一日1~2回舌下に服用し尿量を減らします。スプレー式の点鼻薬を使うこともあります。
  • 薬の効果には個人差があるため通常入院して毎日尿量・飲水量・体重を測定し、また血液の電解質(ナトリウム)に問題のないことを確認し、薬の量を調整します。

非機能性下垂体腫瘍

1. どのような症状がみられるのか?

  • ホルモンを過剰に分泌しない腫瘍なので、腫瘍自身が大きくなることによって症状がでます。通常は、腫瘍による視神経の圧迫から視野の外側が見えにくくなる(視野狭窄)という症状で気付かれます。
  • 腫瘍により正常な下垂体が圧迫されると、必要なホルモンの分泌が不足してしまい、さまざまなホルモン不足による症状が出てきます(下垂体機能低下症の項目を参照して下さい)。
  • ある日、突然に頭痛を伴って視野狭窄や下垂体機能低下症が起こることがあります。これを「下垂体卒中」と呼びます。

2. どのような病気なのか?

  • 下垂体の前葉に発生するほとんどが良性の腫瘍です。

3. どのように治療するのか?

  • 原則は、手術により腫瘍を摘除することです。
  • 手術を検討する場合、通常は視野の回復を第一に考えます。
  • 下垂体ホルモンの不足が認められる場合には、必要なホルモンをくすりとして補っていきます。

下垂体機能低下症

1. どのような症状がみられるのか?

  • 下垂体から分泌されるホルモンの種類は多いので、それぞれ不足するホルモンによって多彩な症状が表れます。
  • ACTH欠乏:ACTHは副腎皮質を刺激するホルモンです。これが欠乏すると、副腎からステロイドホルモン(コルチゾール)の分泌が低下し、重症化すると副腎不全(副腎クリーゼ)とよばれる生命の維持が困難な状態となります。初期には自覚症状に特徴的なものはないので、大事に至るまで気付かれないこともしばしばあります。診断がついた患者さんに尋ねると、「疲れやすい」、「下痢しやすい」、「風邪をひくとすぐに寝込んでしまい2週間以上治らない」、「胃カメラの検査を受けたら1週間寝込んだ」、「食欲が無く痩せてきた」、「からだのあちこちの筋肉や関節が痛い」などというエピソードを聴取することができますが、残念ながら患者さん自身がこれらのことを意識することは稀です。
  • TSH欠乏:TSHは甲状腺を刺激するホルモンです。TSHが不足すると甲状腺ホルモンが低下します。症状などは「甲状腺機能低下症」の項を参照して下さい。
  • GH欠乏:GHは成長ホルモンです。小児期では身長の伸びに欠かせないホルモンですが成人では不足すると成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)と呼ばれ、疲労感・倦怠感・うつ気分・肥満などの症状をきたすことがあります。
  • LH、FSH欠乏:LHFSHは性腺刺激ホルモンと呼ばれ、女性では卵巣に働いて女性ホルモンを、男性では精巣に働いて男性ホルモンの分泌を調節しています。LHFSH欠乏により女性では無月経、男性では性欲の低下がみられます。

2. どのような病気なのか?

  • 大部分は、下垂体または下垂体付近に発生した腫瘍や炎症が原因です。また脳下垂体の手術後におこることもあります。

3. どのように治療するのか?

  • 原則は、ホルモンの補充療法を行います。ACTH欠乏、TSH欠乏に対しては副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモンの補充をそれぞれおこないます。GH欠乏の場合はGHの自己注射を行います。LHFSH欠乏の場合、女性は50歳以下の場合は女性ホルモンの内服を行います。挙児希望の場合は不妊治療が必要になります。男性の場合、男性ホルモンの筋肉注射を毎月1回行うことが一般的です。
  • 下垂体腫瘍の手術により下垂体ホルモンの不足が改善する場合もありますが、逆にさらに多くのホルモンの不足が起こることもあります。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

1. どのような症状がみられるのか?

  • 最も頻度の高い内分泌疾患のひとつです。
  • 20歳代、30歳代の女性に多くみられます。しかし、全年代にわたってみられる疾患で、男性患者さんも稀ではありません。
  • 食欲はあるのに体重が減る、汗をかきやすい、微熱がある、動悸を感じやすい、指先がふるえる、イライラする、落ち着かない、脚に力が入らない、便がゆるくなる、などがよくみられる症状です。
  • 眼の飛び出す病気として知られていますが、眼の症状は個人差が大きく、必ずしも眼球突出がおこるわけではありません。
  • 甲状腺の腫れも個人差が大きく、見ただけで判るほど大きい人からほとんど腫れのない人まで様々です。
  • 妊娠可能な年齢の女性に多いので、不妊や月経異常などで産婦人科を受診して発見されることもよくあります。
  • 多くの患者さんは頻脈になり、動悸を感じやすくなりますが、しばしば心房細動という不整脈をおこします。
  • 高齢者では先に述べた症状は目立たず、心房細動のみが症状である場合が多いので注意が必要です。

2. どのような病気なのか?

  • 甲状腺ホルモンの過剰な分泌により、全身の代謝が亢進します。そのため、体重が減ったり、微熱が出たりします。
    また、コレステロールや中性脂肪が著しく低下していることから気付かれることもあります。
  • 甲状腺ホルモンの過剰は、自律神経のうちの交感神経の緊張を引き起こします。動悸、ふるえ、イライラ、便がゆるくなる、などはそのために生じる症状です。一言でいえば、いつもビックリしたり、緊張したりしている状態にあるといえます。
  • 大部分の患者さんの血液中には甲状腺ホルモンの産生を刺激する自己抗体(TSH受容体抗体:TRAb)が認められ、これが病気の原因と考えられています。

3. どのように治療するか?

内服薬による治療

甲状腺ホルモンの産生を抑えるくすりを服用します。副作用の出現に注意しつつ、次第に減量して正常な甲状腺機能を維持していきます。通常、少なくとも2年間の内服継続が必要となります。

アイソトープ(放射性同位元素)による治療

ヨード(ヨウ素)のアイソトープを内服することによる治療法です。バセドウ病ではヨードが甲状腺に特に集まりやすいという性質を利用したものです。甲状腺内部に蓄積されたアイソトープから発生する放射線により甲状腺組織を破壊します。治療前に十分な検査を行い、内服するアイソトープ量を決めます。通常は、一度の内服でアイソトープ治療は完了しますが、その後も定期的な通院は必要です。また、多くの場合には、治療後のいずれかの時期に甲状腺ホルモンの不足状態に陥ります。その場合は、適量の甲状腺ホルモンを内服します。

手術による治療

非常に甲状腺が大きい、副作用のため内服薬が使えない、内服薬による治療に抵抗性である、などの場合には手術を考慮します。甲状腺を一部分のみ残して大部分を切除する方法です。通常、術後すぐに甲状腺機能は改善します。しかしながら、時には術後しばらくしてから甲状腺ホルモン不足の状態に陥ることがあります。また、稀には再発することもあります。

眼の障害に対する治療

バセドウ病に伴う眼の障害の典型は眼球突出です。これは眼球そのものの異常ではなく、眼球を動かす筋肉や眼球周囲の脂肪組織の炎症性肥厚により生じます。複視(ものが2重に見える)、充血、流涙、痛みなどが自覚症状として表れることがあります。重要な点は、バセドウ病に伴う眼の障害は甲状腺機能とは直接の関連がない、ということです。眼の障害を合併する患者さんは、甲状腺を刺激する抗体に加えて眼の周囲の組織(筋肉や脂肪組織)を刺激する自己抗体ももっていると考えられています(残念ながらこちらの自己抗体の日常的な検査法はありません)。したがって、甲状腺に対する治療を受けても、必ずしも眼の症状が改善するわけではありません。やっかいなことに、甲状腺の治療中に、それまで見られなかった眼の障害が新たに出現してくることもあります。

バセドウ病に伴う眼障害は眼球そのものの異常ではないため、必ずしも全ての眼科で適切に対応できるわけではありません。治療法も確立されたものはありませんが、一般的には、ステロイド短期大量療法(パルス療法)、放射線外照射、手術などの手段があります。このうち、手術以外は当センターで実施しております(2~3週間の入院加療)が、症状が著しい、難治である、手術が必要、などの場合には専門の施設をご紹介しております。

橋本病(慢性甲状腺炎)

1. どのような病気なのか?

  • この病気は、血液中に甲状腺の成分に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体:TgAbや抗甲状腺ぺルオキシダーゼ抗体:TPOAb)が存在することにより生じるものです。この自己抗体は、成人の10%程度に認められ、特に女性では20%近くに認められることから、体質のひとつと考えてもよいでしょう。
  • ゆるやかに甲状腺組織の炎症(破壊)が進行します。その結果として、甲状腺が腫れたり、甲状腺ホルモンが不足したりすることによってこの病気に気付かれます。

2. どのように対処するか?

  • 甲状腺ホルモンの不足が生じていれば、内服薬で補充します。
  • 甲状腺ホルモンの不足がなければ、時々(年1~2回)の定期的診察で様子をみます。残念ながら、橋本病そのものに対する特別な治療法はありません。
  • ヨード(ヨウ素)の摂りすぎにより甲状腺ホルモンが不足することがあるので注意が必要です。
  • 稀に一過性の甲状腺ホルモンの過剰状態になることもあります。

甲状腺機能低下症

1. どのような症状がみられるのか?

  • 顔などがむくむ、寒がりになる、便秘がひどくなる、皮膚のうるおいがなくなる、手のひらが黄色い、甲状腺が腫れる、などの症状があらわれます。
  • 自分では症状に気付かないことが多く、甲状腺が腫れているなどの異常を偶然に指摘されてみつかることがしばしばあります。
  • 健診やドックなどで、コレステロールや中性脂肪の著しい高値を指摘されて気付かれることがあります。日常的に行われる検査値としてはCPK (CK)やLDHが高いということをきっかけに気付かれることもあります。
  • 高齢者では、応答や反応が遅くなったりすることが目立つ場合があります。

2. どのような病気なのか?

  • 甲状腺ホルモンが不足した状態です。そのために、代謝が低下して、むくみ、寒がり、便秘などの症状が出現します。
  • 通常はゆるやかに進行しますので、自分でなかなか気付きません。
  • 甲状腺ホルモンの不足は、コレステロールが高くなることなどによって動脈硬化を悪化させます。長期間にわたり甲状腺ホルモンの不足が続くと、動脈硬化が進行して狭心症や心筋梗塞をおこしやすくなるので注意が必要です。

3. どのように治療するのか?

  • 治療には適量の甲状腺ホルモンを内服します。
  • 内服をはじめてしばらくは、動悸を感じたりすることがあります。特に、高齢者や動脈硬化が進んでいる人の場合には、注意深く、少量のお薬から治療を始めます。
  • 甲状腺ホルモンは、ヒトの体内に存在するものと同じものが内服薬として合成されていますので、安心して服用できます。また、通常、一日一回の内服で十分です。
  • 一旦、甲状腺ホルモンの不足状態になってしまったら、一般的には長期にわたり内服を続ける必要があります。

甲状腺の腫瘤(結節)

1. どのような病気があるか?

腺腫様甲状腺腫

甲状腺の過形成による多発性の結節形成。腫瘍ではなく、良性の疾患。

良性甲状腺腫瘍

濾胞(ろほう)腺腫などの良性の腫瘍。

甲状腺癌

甲状腺の悪性腫瘍はおよそ5種類に分類されますが、それぞれ悪性度が大きく異なるとともに治療法も大きく異なるので、どのような癌であるのかが重要となり、正確な診断が求められます。

亜急性甲状腺炎

通常は、発熱や甲状腺結節部分の強い痛みがあることから診断されます。通常、プレドニゾロン等のステロイド製剤の内服や鎮痛解熱剤で治療します。

2. どのように対処するか?

  • 診断のために最も重要な検査は、超音波(エコー)検査です。診察で、甲状腺の腫瘤(結節)が認められた場合には、一度は超音波検査を受けましょう。
  • 超音波検査では良性か悪性かの区別が付けられない場合、悪性の可能性が高い場合には、超音波検査を行いながら病変部に細い針を刺して細胞を採取して病理学的に検査をします。
  • 良性の腫瘤(結節)の場合には定期的な診察と検査のみで様子をみます。
  • 悪性の場合には、その診断によって対応が異なりますので、それぞれ適切に対処します。

妊娠・出産と甲状腺の病気

1. 甲状腺の病気をもつ女性の妊娠・出産に関する注意点

甲状腺の病気は比較的若い女性に多い病気ですので、妊娠・出産に関する配慮が必要となります。

バセドウ病の場合

原則(たてまえ)としてはバセドウ病が良くなり、治療が不要となってから妊娠することが望まれるのですが、現実的には、バセドウ病は何時になったら治療が完了するのか予測することが困難な病気であることや、妊娠・出産には年齢的あるいは社会的な要因が大きく関係してくるので、バセドウ病の治療中に妊娠・出産する場合もしばしばあります。治療中に妊娠をする場合に大切な点は次のような事柄です。

1)出来る限り計画的に妊娠する

バセドウ病の患者さんの妊娠では、甲状腺ホルモンが正常化しているということが最も大切です。そのため、妊娠を希望している場合には担当医によく相談して下さい。治療のための薬剤の内服よりも、甲状腺ホルモンが過剰であることの方が、胎児にとってはるかに危険であることをよく理解して下さい。
通常、妊娠によってバセドウ病の活動性(病気の勢い)は軽くなるので、おくすりを減量する場合が多くなります。また、甲状腺ホルモンと抗甲状腺薬を併用している場合には、甲状腺ホルモンを中止して抗甲状腺薬を減量することになりますので、いずれにしても事前に担当医によく相談して下さい。また、予定外に妊娠した場合には出来るだけ速やかに担当医に連絡して下さい。

2)治療薬について

バセドウ病の治療薬は、妊婦に安全であることは保証されていません。しかしながら、これらのおくすりはこれまで数十年にわたり多くの妊婦に用いられています。その経験からは、バセドウ病のくすりを服用しているから妊娠を断念する必要はないといえます。
病気そのものの胎児への影響や出産後の授乳に関しても理解しておくべきことがありますので、担当医にご相談下さい。
なお、虎の門病院では産婦人科と薬剤部が中心となり、「妊娠とおくすり」に関する相談を受け付けております。

甲状腺機能低下症の場合

甲状腺ホルモンを内服している場合には、妊娠が判明したらただちに担当医に相談して下さい。妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量がやや多くなりますので、一般的に妊娠中期からは妊娠前の1.5倍くらいの量を内服することになります。しかしながら、個人差がありますので、血液検査の結果をみながら、くすりの必要量を決めていくことになります。

バセドウ病、橋本病、甲状腺機能低下症などすべての場合

これらの病気は免疫機構の障害により生じることが大部分です。このような病気は一般に、出産後に悪化することが多いといわれています。出産後、3~6ヶ月くらいで甲状腺ホルモンが不足したり、バセドウ病が悪化したりすることがありますので、疲れやすさなどの体調の悪化を自覚したら早めに担当医にご相談下さい。

副甲状腺機能亢進症

1. どのような症状がみられるのか?

  • 通常は無症状。血液中のカルシウム濃度の上昇が検査における主な異常。
  • 腎臓結石、尿管結石の原因になることがあります。
  • 骨量が減少します。
  • 時に、便秘、食欲低下、イライラ、うつ、多尿などの症状が現れることがあります。
  • 職場や地域の健診では血中カルシウム濃度の測定は行われておりませんので、肝機能検査として行われているALP(アルカリフォスファターゼ)が高いということでみつかる場合もよくあります。これはALPが肝臓以外にも骨でつくられているためです。
  • 副甲状腺ホルモンの過剰により、骨が溶かされて血液中のカルシウム濃度が上昇し、尿中へのカルシウムの排泄が増加します。
  • このために、高カルシウム血症、骨量の減少、腎臓結石(カルシウム結石)が生じやすくなります。
  • 従って、骨粗鬆症や腎臓結石のための検査中にこの病気が発見されることもしばしばあります。
  • 高カルシウム血症は、便秘、食欲低下、イライラ、うつ、多尿の原因となることがあります。

3. どのように治療するのか?

  • 大部分の副甲状腺機能亢進症は副甲状腺の良性腫瘍によっておこります。したがって、手術によりこの腫瘍を切除することで治療できます。副甲状腺は4個あるため、1つを切除しても何ら支障は残りません。
  • 時に、特殊な病気として、副甲状腺が4腺とも腫れている場合があります。この場合には、手術の必要性をより念入りに検討します。手術では、多くの場合、すべて一旦切除した上でその一部を腕の内側に移植します。
  • 稀ですが、副甲状腺癌の場合もあり、手術後に再発する場合があります。
  • 手術により良くなる可能性は98%以上です。
  • 現在のところ、内科的な治療(くすりなど)はありません。
  • 腎臓結石や尿管結石がある場合、骨粗鬆症がある場合には積極的に手術がすすめられます。また、手術によりそれらの病気の改善も期待できます。
  • その他の場合にも、手術を受けることにより骨量の増加や高カルシウム血症による症状の改善が期待できます。
  • 手術ができない、あるいは受けられない場合には、主に骨量の低下を防ぐための治療、すなわち骨粗鬆症の治療と同様の治療がすすめられます。
  • 日常生活上の注意としては、尿中のカルシウムを薄めるために、できるだけ水をたくさん飲むことがすすめられます。

副腎偶発腫瘍

1. どのような病気なのか?

  • 腹部のCTやMRI検査が普及したために、偶然に副腎に腫瘍が見つかった場合に「副腎偶発腫」とされます。腹部CT検査の数%で副腎に異常が見つかるとされています。その多くは病的なものではありませんが、一部は治療を必要とする病気と診断されます。副腎に異常があると指摘されたら、一度は専門医に相談することが勧められます。このように偶然に見つかる副腎腫瘍の中には次のような病気が含まれています。
  1. 原発性アルドステロン症
  2. クッシング症候群
  3. 褐色細胞腫/パラガングリオーマ
  4. 副腎癌

それぞれの詳細は関連の項目を参照して下さい。

原発性アルドステロン症

1. どのような症状がみられるのか?

  • 主な症状は高血圧です。原発性アルドステロン症と気付かれずに永年にわたり高血圧の治療を受けている場合もあります。
  • 血中のカリウム濃度が低下する場合が多く、その程度が著しいと手足に力が入らなくなる、脱力症状が現れることがあります。

2. どのような病気なのか?

  • 副腎皮質からアルドステロン(鉱質コルチコイド)とよばれるホルモンが過剰に分泌されることにより生じる病気です。
  • アルドステロンの過剰分泌は副腎皮質の良性腫瘍から生じる場合と、両側の副腎全体から生じる場合(過形成といいます)があります。
  • 最近の研究から、従来考えられていたほどめずらしい病気ではなく、高血圧患者の2~5%はこの疾患によると推定されています。

3. どのように治療するのか?

  • 片側の良性腫瘍が原因の場合と両側の過形成の場合とで大きく治療法が異なりますので、そのいずれであるのかを副腎静脈サンプリングを行うなどして確実に診断することが大切です。
  • 片側の良性腫瘍の場合には手術で摘除することにより治癒が期待できます。しかしながら、高血圧は頻度の高い疾患であり、高血圧の家族歴がある場合や、すでに高血圧が長く続いている場合などには、血圧が正常化しないこともあります。但しこのような場合でも手術後の血圧治療は、術前に比べて容易になるのが一般的です。
  • 過形成の場合や腫瘍でも手術が出来ない場合には、アルドステロン作用を阻害するお薬を用いて血圧の治療を行います。(エサキセレノン、エプレレノン、スピロノラクトン)。

クッシング症候群

1. どのような症状がみられるのか?

  • 満月様顔貌(頬がふくらんだようになる)、にきび、体の中心部(頬、首、鎖骨の上、お腹など)の肥満、薄く傷つきやすい皮膚、あざが出来やすい、むくみ、うつなどの精神症状。
  • 腎臓結石による痛みや血尿、骨粗鬆症による骨折。
  • 高血圧、糖尿病をしばしばおこします。

2. どのような病気なのか?

  • 副腎皮質の腫瘍からコルチゾール(糖質コルチコイド)とよばれるホルモンが過剰に分泌されることにより生じる病気です。クッシング病と似た病名ですが、クッシング病の場合は下垂体の腫瘍が原因で副腎皮質が刺激されおきるもので異なります。しかし両者ともその症状のほとんどはコルチゾールの過剰分泌により生じますので、病状は類似しています。
  • この病気の方は、感染に対する抵抗力が弱く、一旦罹ると重症化しやすいという問題があります。また、高血圧、糖尿病の治療が困難となることなどのために積極的な治療が望まれます。

3. どのように治療するのか?

  • 可能な限り、外科的に腫瘍を摘除します。一般的には、直径数cm程度の単一の腫瘍が原因ですので、腫瘍のある側の副腎を摘出します。
  • 手術が出来ない事情のある場合には、副腎皮質ホルモン合成阻害薬などのおくすりを用います。しかしながら、薬物治療で良好な状態を維持することは困難であることが多く、出来る限り手術で腫瘍を取りきるようにつとめます。
  • 治療が奏功すると、多くの症状や異常は改善します。しかしながら、手術後は逆に副腎機能が低下するため、反対側の副腎が正常に働くまでの間、およそ1年くらいはお薬(コルチゾール作用をもつ糖質コルチコイド)を内服する必要があります。

褐色細胞腫/パラガングリオーマ

1. どのような症状がみられるのか?

  • 血圧上昇、頭痛、動悸、冷汗、顔面蒼白などが発作的に出現する場合があります。
  • 普段から高血圧として治療されている場合や糖尿病を合併することがあります。
  • 同じ病気の患者が家族にいることがしばしばあります。
  • しかしながら最近は、ほとんど自覚症状のないままに、偶然に副腎腫瘍が発見されたことをきっかけに診断される場合が多くなっています。

2. どのような病気なのか?

  • 副腎髄質の腫瘍からアドレナリンなどの血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌されることにより生じる病気です。腫瘍の圧迫などにより急にホルモンが大量に分泌されることがあり、そのような場合に発作的な症状が出現します。
  • 稀には副腎以外の組織が原因になっていることもあります。

3. どのように治療するのか?

  • 可能な限り、外科的に腫瘍を摘除します。腫瘍が非常に大きい場合が多いので、手術方法は患者さん毎によく検討して決定します。
  • この病気では、ホルモンの影響により血管が収縮し血管内を流れる血液量が著しく減少しているために、術前に十分に循環血液量を増やしておくことが必要になります。そのために、α遮断薬という降圧薬を数週間にわたり十分に服用して、血管を拡張させて血液量を増やしていきます。最近では、この術前準備のおかげで、手術中に輸血を必要とすることが少なくなりました。

骨粗鬆症

1. どのような症状がみられるのか?

  • 若いときと比べて身長の低下が認められたら骨粗鬆症を疑います。これは、年をとるにつれて姿勢の悪化や背中が丸くなる(円背)ことにつながります。
  • 腰痛や背部痛もよくある症状ですが、これらの症状は骨粗鬆症以外の病気でもしばしば生じますので注意が必要です。
  • 普通に転んだだけなのに骨折してしまった経験があれば、骨粗鬆症を疑います。
  • しかしながら最近は、自覚症状のない時期に、健診などでの骨密度測定により診断される場合が増えてきています。

2. どのような病気なのか?

  • 骨は常に代謝されており、古い骨が新しい骨に作りかえられています。これは骨を溶かす過程(骨吸収)と作る過程(骨形成)が繰り返されることにより営まれていますが、このバランスが崩れ、骨形成が骨吸収に追いつかなくなると次第に骨量は減少していきます。
  • 骨の量は30歳頃に最大となり、50歳を過ぎる頃から、男女を問わず加齢とともに骨の量は減少していきます。
  • 骨量の維持には女性ホルモンのエストロゲンが非常に重要であることから、特に女性では閉経後に急速に骨量が減少します。
  • 男性の場合も骨にとってはエストロゲンが大切です。男性ではエストロゲンは男性ホルモンから作られますので、男性ホルモンの低下が骨量の減少につながります。
  • 骨量の減少により骨折を起こしやすくなります。この場合の骨折とは背骨(脊椎骨)の変形も含みます。従って、身長が低くなる、背中が丸くなる、腰が痛くなるなどの症状も、広い意味では骨折によりもたらされているといえます。
  • 骨粗鬆症になりやすくなる要因としては以下のものが挙げられます。

1)早期閉経(両側卵巣摘出術やホルモンの病気など)

2)母親や祖母が骨粗鬆症(糖尿病などと同様に、骨粗鬆症も遺伝的素因が大きく関与する病気です)

3)若い頃から痩せている(体重や肥満度と骨量との間には強い相関があります)

4)若い頃に運動をしなかった

5)アルコールを多飲する(特に男性ではこれが一番の原因です)

6)ステロイドを内服している(ステロイド内服はほとんどの場合に骨量を減少させます)

  • 診断は背骨(胸椎と腰椎)のレントゲン写真および骨密度測定により行います。しかしながら、問診やその他の検査により骨粗鬆症以外の病気でないことを慎重に除外する必要があります。

3. どのように治療するのか?

  • 治療の目的は骨折を予防することです。
  • 治療の方針は次の3つです。

1) 十分なカルシウムとビタミンDを摂る。このためには日光浴も大切です。

2) 適度な運動をこころがける。60歳を過ぎたら、骨を鍛えるというよりも、筋力を維持したり、体のバランスを保つ力を訓練したりすることが大切です。

3) 適切な治療薬を用いる。

  • いったん骨粗鬆症と診断されたら、1)と2)のみでは不十分です。自分にあったおくすりを続けることが大切です。
  • 骨密度が低いことは骨粗鬆症の診断をする上では非常に重要な所見ですが、治療を開始したらあまり骨密度を気にする必要はありません。
  • 生活習慣としては、アルコールを控える、禁煙する、良く歩く、魚を食べる、毎日10~15分でも陽に当たるなどを心がけましょう。

間脳下垂体疾患で通院中の皆様へ

間脳下垂体疾患のうち、下記の7疾患が難病認定され、該当者は医療費の支援を受けられる場合があります(ただし、治癒している、あるいはこの疾患に対する治療を必要としない場合は通院していても対象とはなりません)。居住地所轄の保健所の「特定疾患に対する医療費助成の申請」に係わる窓口にお問い合わせいただき、速やかに、医療費助成のための手続きをお取り下さい。

難病認定されている間脳下垂体疾患

  • 下垂体性ADH分泌異常症(指定難病72)
  • 下垂体性TSH分泌亢進症(指定難病73)
  • 下垂体性PRL分泌亢進症(指定難病74)
  • クッシング病(指定難病75)
  • 下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症(指定難病76)
  • 下垂体性成長ホルモン分泌亢進症(指定難病77)
  • 下垂体前葉機能低下症(指定難病78)

なお、実際の手続きにあたっては様々な条件を満たすことが必要とされます。申請しても医療費助成の対象とはならない可能性もあります。

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【トピックス】虎の門病院様_小児科ー.jpg21-1.診療科目ページ_間脳下垂体部門.jpg21-2.トピックス_間脳下垂体外科.jpg

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