泌尿器ロボットセンター
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現在泌尿器科領域において手術支援ロボットを用いた手術は非常に重要な位置付けとなっております。本邦においてもその件数はここ数年で爆発的に増加し従来の手術(開腹、腹腔鏡)に取って代わる存在となっています。
当科では高度先進医療の一貫としてこのロボット手術に力を入れております。手術支援ロボットであるダヴィンチは、3Dカメラを用いることにより鮮明かつ拡大機能を持つ三次元での手術操作を可能とするとともに、人間の手以上の可動域を持つ3本のアームを手術野に挿入し、極めて狭い空間でも自由な操作が可能となり手術をより正確に行うことができます。また、気腹圧による少ない出血量および小さな皮膚切開という腹腔鏡手術の最大の利点を兼ね備えた画期的手術手技となり、2012年に前立腺癌の治療において保険診療となりました。現在日本では前立腺全摘術の90%以上がロボット支援手術で行われ、標準術式として広く普及しています。当科においても前立腺全摘術のほぼ100%をロボット支援下に行っており、その特性を活かしながら患者さん毎に制癌性や術後の生活の質(QOL)両面を検討し、低侵襲性や機能温存に拘って手術を行っております。
さらに2023年度からは次世代のロボットである「Hugo RAS」(通称ヒューゴ)を導入しています。ダビンチと異なり、アームが独立し手術の自由度が高まり、オープンコンソールでスタッフ間の円滑なコミュニケーションが可能という特徴があります。ダビンチと使いわけ、様々な疾患に幅広く提供しています。
また前立腺全摘術だけでなく、近年は腎癌に対する腎摘除術、腎部分切除術、腎盂癌尿管癌に対する腎尿管全摘徐術、膀胱癌に対する膀胱全摘除術、副腎腫瘍に対する副腎摘除術もロボット支援下手術が保険診療となっており、黎明期より行ってきた腹腔鏡下手術やロボット支援下前立腺全摘術のノウハウを活かし積極的に取り組んでいます。
当科ではロボット支援手術プロクター4名、ロボット手術認定医6名を有し、ダビンチ手術に加え、次世代の最新機種「Hugo RAS」を用いて今後も質の高いロボット支援下手術を提供するように努めています。
近年、高齢化や食生活の変化、健診によるPSA検査(前立腺の腫瘍マーカー)の普及により急増しており、2016年前後から本邦では男性の年間罹患者数がトップになりました。当科では前立腺センターと密に連携をとり診断から治療まで一貫して受けていただくことが可能です。また手術支援ロボットを用いて術後疼痛、尿もれ、勃起機能などその後の生活の質(QOL)向上を目指し、低侵襲性と機能温存に拘って手術を行っております。一方、悪性度の高い進行した前立腺がん対しては高制癌性にも拘り、拡大切除やリンパ節廓清の必要性および性機能温存の可否を判断しています。
近年健診による画像評価が充実したことで、無症状で比較的初期の小さい腎腫瘍が見つかることが多くなりました。小さい場合には腫瘍の部分だけを摘除する部分切除が可能なことが多いため、正常な腎臓の部分を残すことができます。ロボット支援手術が導入され、これまで部分切除が困難で腎摘除が行われていた例においてもなるべく部分切除を試みています。
また、大きな腎癌に対して行われる腎摘除術もロボット支援手術が可能となり、これまで開腹手術で行っていた例に対して、負担の少ないロボット支援手術を導入しています。
これまで膀胱全摘除術は、開腹手術よりも患者さんへの負担が少ない腹腔鏡下の膀胱全摘術を積極的に行ってきましたが、現在はロボット支援下手術を基本としています。ロボット支援下手術の特徴を生かして、体内で尿路変向術を行う方法を採用し、腹腔鏡よりさらに負担が少なくなりました。より細やかな手術により、少ない出血量、がんを確実に残さず摘徐するという目標を達成するよう努めています。
腎盂癌・尿管癌に対する腎尿管全摘徐術は腹腔鏡で行ってきましたが、ロボット支援手術でも保険適応となり導入しています。特にリンパ節の摘除が必要な場合には、ロボット手術の利点を生かせると考えられており積極的に活用しています。
当院では内分泌科の協力のもと年間20例前後と非常に多くの副腎腫瘍手術を行っています。副腎腫瘍に対する手術は原則腹腔鏡手術で行っていますが、腫瘍が大きな場合、褐色細胞腫という特殊な腫瘍の場合にはより安全なロボット手術を検討します。
これまで狭窄症に対する腎盂形成術は腹腔鏡で行ってきましたが、より細かい操作が可能なロボット手術を原則としています。