心臓・血管カテーテルセンター

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メッセージ

2018年5月より新たに心臓・血管カテーテルセンターが立ち上がりました。 虚血性心血管疾患、不整脈、弁膜症のカテーテル治療など、心臓・血管カテーテル室で施行されるすべての手技を統括管理する部門です。近年この分野の発展は目覚ましく、極めて高い専門的知識と技能が求められており、その専門に特化した医師がセンター長および副センター長を務め、循環器センター内科医師と相互に協力して高度な医療を提供してまいります。

当院はがん拠点病院となっていることもあり、外科手術件数が最も多い病院の一つです。手術が必要と判断された患者さんの中には、心疾患を有している方も少なからず存在し、このような患者さんをいかに安全かつ迅速に目的である手術などの治療に結びつけるか、また手術が終わった後も当該の心疾患により予後が悪化することのないように細やかにケアを行う、これらも我々の重要な診療の一つとしております。

循環器内科医師をめざす若手の先生へ

虎の門病院では常に若手医師の教育に力を注いでおります。新内科専門医研修コースでは初年度には通常のCAGがほぼ一人で全てこなせるように研鑽を積んでいただき、2年目にはPCIの手ほどきを始めます。3年目の後半に入りますとType B2病変であっても術者をこなせるようになります。進度の早い医師にはロータブレーターに触れるチャンスも与えております。不整脈に関しても、PSVTの鑑別方法といったEPSの基本からの考え方、手技ではまず、冠静脈へのカテーテル留置、アブレーションは心房粗動に対する下大静脈-三尖弁輪間峡部(CTI:cavo tricuspid isthmus)に対する線状焼灼から、ペースメーカーも基本的な機能の理解から埋め込みまで、習熟度に合わせて学ぶことができます。我々の理念はどんな高い診療技術を持っていても後進に伝えていかなければ、意味をなさないと考えており、安全性を十分担保した上で若手医師にも最大限のチャンスが与えられるよう心がけております。

扱う疾患(虚血性心疾患)

虚血性心疾患

心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしている筋肉の塊ですが、24時間365日休まず働くために、自分自身にも十分な血液を送る必要があります。心臓に血液を送る血管を冠(状)動脈といい、比較的動脈硬化の影響が出やすい血管として知られています。この冠動脈に動脈硬化が生じ血管が狭くなると運動時に心臓が必要とする十分な血液を供給できなくなるため、典型的には胸の圧迫感を感じるようになります。これを労作性狭心症といいます。痛みの感じ方や表現は様々であり、胸全体以外にも左胸、のど、みぞおち、左肩〜左腕、下あごなどに同様の症状や痛み・違和感などを訴える場合が多いです。また、糖尿病の方や高齢者は症状を自覚しにくく、軽度の息切れであったり全くの無症状であったりすることも少なくありません。冠動脈疾患の危険因子は高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、高齢、男性などが指摘されており、当てはまる方で上記のような症状に心当たりのある方には受診をお勧めします。

冠動脈疾患のうち、安定狭心症の場合には薬物療法による治療が基本となりますが、高度狭窄や予後に影響のある病変に対しては経皮的冠動脈形成術(PCI)を行なっており、当院の基本理念である『その時代に成しうる最良の医療を提供する』ことを方針としております。このため、冠動脈狭窄の中でも治療難易度の高い高度石灰化病変や分岐部の病変に対しても積極的に治療に取り組んでおり、高速回転式アテレクトミー(ロータブレーター)やOrbital アテレクトミーシステム(Diamondback 360)、方向性粥腫切除術(ほうこうせいじょうしゅせつじょじゅつ)(DCA)を駆使し、これらは屈指の治療件数を誇っております。PCIの初期治療成功率も99.7%(2014-2016)と極めて良好です。

            図: Diamondback 360の本体と切削を行うCrown

: Crown部で石灰化を切削するイメージ

また、当院の特徴としては併存疾患を有する方が多く、がん患者さんや腎不全を有する方などにも単に血管の治療を行うのみではなく、先を見据えた最良の全人的医療を提供すべく個々の患者さんごとに治療方針をカスタマイズしております。特に近年においては冠動脈の見た目の狭窄度だけで治療方針を決めるのではなく、実際に心筋に虚血が生じているかどうかを検査することにより治療適応を決定することにしております。当院では冠動脈造影の際にFFR/iFR/RFRなどの虚血評価を行うデバイスを積極的に使用しています。結果としてPCIの総数は年々減少しておりますが、真に治療が必要な方にのみ治療をお勧めしています。

                 図:冠動脈の虚血評価の一例

新規に胸部症状が出てきた場合や安静時の胸痛、胸部症状が増悪してくるものを不安定狭心症と呼びます。心筋梗塞に移行する可能性が高い危険な病態であり、直ちに積極的な介入が必要になりますので、このような場合には躊躇(ちゅうちょ)せず受診するようにしてください。心筋梗塞は依然として致死率の高い恐ろしい病気ではありますが、病院にたどり着き早期に治療が行われた場合には95%の方が元気に退院することができます。当院では24時間体制で心筋梗塞の治療に取り組んでおり、受診から治療開始までの時間を最短で行えるよう体制を整えております。

ロータブレータの機材(burrの部分)

ロータブレータの概略

DCAの機材

DCAによる粥種切除の概略

閉塞性動脈硬化症

  1. 閉塞性動脈硬化症について

下肢閉塞性動脈硬化症は、喫煙・糖尿病・腎臓病などにより引き起こされる動脈硬化(血管の老化現象)が原因となって足の動脈の血流が悪くなる病気です。年齢と共に増加するとされています。

  1. 閉塞性動脈硬化症の症状

病気の状態により、以下のような症状が現れます。

  1. 歩行時に足がだるくなる、ふくらはぎがつっぱる、しびれるなどの症状が起こるが、休むと楽になる(間欠性跛行 かんけつせいはこう)
  2. 歩かなくても足が痛い、足が冷たい、足を下に下げたら痛みが楽になる(安静時疼痛)。
  3. 足に傷ができて治らない。赤く腫れている、指先やかかとが黒くなっている(重症下肢虚血・図のような状態)

特に3の状態の場合は緊急性が高く、すぐに受診し検査・治療が必要です。

  1. 検査方法について

まず初めに足と腕で血圧を測るだけの簡単な検査であるABIAnkle brachial index: 足関節上腕血圧比)を行います。異常があった場合には血管エコー(超音波)や皮膚還流検査(SPP: Skin perfusion pressure)といった体の負担の少ない検査を行います。

病気が疑われる場合にはMRIや造影剤を使用したCT検査、カテーテルを用いた血管造影検査を行います。

   

    図: ABI検査(0.9以下を異常所見と判断します)          MRI検査

  1. 治療法について

治療の基本は運動療法と薬物療法です。間欠性跛行の患者さんはまずこの治療を行い、症状の改善がみられるか経過観察を行います。それらの治療で改善が見られない場合や重症下肢虚血の方には、血管内治療(カテーテル治療)やバイパス手術を行います。

当院では長区間の下肢動脈閉塞の治療に際しては、検査技師さんと協力し超音波で血管とガイドワイヤを目視しながら治療を行うことにより、安全性の担保と患者さんの放射線被ばくの低減を行っております。是非閉塞性動脈硬化症の症状でお困りの方はご相談ください。

エコーガイド血管内治療。画面左がエコー技師さん。患者さんの太ももの血管を超音波で描出し、それを見ながら術者(右奥)が治療を行っています。

エコーガイド血管内治療の画面。矢印は閉塞した血管の中を進む治療用のガイドワイヤ。

難治性深部静脈血栓症に対するカテーテル治療

当院では難治性の深部静脈血栓症(DVT)に対する経カテーテル血栓溶解療法(CDT)を行っています。特に発症早期(14日以内)の腸骨静脈や大腿静脈領域の完全閉塞を伴うDVTでは、CDTは有力な選択肢と考えられます。下肢のむくみや痛みが突然出現し、深部静脈血栓症と診断された方で、発症2週間以内で改善が乏しい方は、かかりつけの先生とご相談の上ご検討ください。

      図:当院で施行しているCDTの方法のイメージ(患者さんにより治療期間・薬剤量は異なることがあります)

難治性高血圧に対する腎動脈カテーテル治療

複数の降圧薬を服用しているにも関わらず血圧が下がりにくい方の中に、腎動脈狭窄症が一定数いらっしゃるといわれています。当院では血液検査や画像診断によって難治性高血圧を合併した腎動脈狭窄を診断した際には、カテーテル治療を行っています。上記に該当する方は一度主治医の先生とご相談いただき、当院にご相談ください。

  図: 腎動脈狭窄に対するカテーテル治療  下段の数値は治療前後の血流の改善を意味しています。

【虚血性心血管疾患の治療実績(件)】

2018年 2019年 2020年
冠動脈造影(CAG) 788 680 694
FFR/iFR/RFRなどを用いた虚血評価 95 125 151
経皮的冠動脈インターベンション(PCI) 363 331 321
うち緊急PCI 43 49 55
Rotablator/Diamondback使用数 77 49 59
方向性粥腫切除術(DCA) 22 13 13
大動脈バルーンパンピング(IABP) 13 13 9
経皮的心肺補助(ECMO) 5 4 4
末梢血管カテーテル治療(EVT) 84 52 63
経カテーテル血栓溶解療法(CDT) 0 2 5
心筋生検 4 6 16

扱う疾患(不整脈)

不整脈

正常な心臓は、左右それぞれの心房、心室で構成されます。正常な脈は、右心房にある洞結節で安静時には1分間に60回から100回ほど電気が起こり、心房をまず電気的に興奮させ、房室結節と呼ばれる心房と心室をつなぐ特殊な組織を介して、心室を電気的に興奮させます。このような正常の脈を洞調律とよび、1日に約10万回も規則正しく脈を打っていることになります。正常な脈を保つことは、心臓の機能である、血液を循環させるポンプとしての機能を正常に保つ上でも大変重要な意味を持つことがあります

不整脈の中には、純粋に不規則な脈や、頻脈と呼ばれる異常に速い脈や、徐脈と呼ばれる異常に遅い脈も含まれます。不整脈とは、特に要因のないこともありますが、心臓の病気(虚血性心疾患や心筋症など)、遺伝性、加齢などにより、電気の発生や流れに異常が起こり、正常な脈が作られなくなることを意味します。その中には経過を見るものだけでいいものから、致死的なもので緊急で加療を要するものまで様々なものが含まれます。症状は、あまりないものから、動悸、息切れ、疲れやすさ、ふらつき、めまい、失神、突然死などと多岐にわたり、症状だけでは診断に至らないことも多く、検査を行う必要があり、頻度の少ないものに関しては繰り返し検査を要することもあります。

不整脈の診断に必要な検査は、外来で行う心電図、ホルター心電図(24時間心電図)、負荷心電図、心臓超音波検査などや、入院して行う心臓電気生理学検査(EPS、血管からカテーテルを心臓まで入れて不整脈を誘発します)、埋め込み型心電計(2~3年の間、不整脈イベントを記録します)があります。

不整脈に対して、適切に検査を組み、正確に診断し、患者さん個々にあった治療やその選択肢を提供するには専門的な知識を必要とします。

防水対応ホルター心電計

12誘導対応ホルター心電計

運動負荷心電図装置

埋め込み型心電計のイメージ(提供 日本メドトロニック株式会社)

埋め込み型心電計のイメージ防水対応ホルター心電計

1 徐脈性不整脈

徐脈性不整脈には、洞不全症候群(洞結節の異常)、房室ブロック(房室結節の異常)、徐脈性心房細動(房室結節の異常)があります。脈が遅くなるというのが共通した特徴ですが、ずっと遅いものや、時々遅くなるものなどがあります。年齢に伴って増えてくることが多い病気ですが、心臓の手術や心筋梗塞を契機に発症する事もあります。あまり症状のない事もありますが、心臓のポンプとしての機能が保てなくなると、疲れやすさ、息切れやむくみ、失神などの症状が出てきます。

薬剤性など可逆的な要因がなく、有症候性であれば、ペースメーカーの埋め込みが必要となります。ペースメーカーに関しては別項をご参照ください。

ペースメーカーの設定も個々の病態にあった設定が必要なことも多く、埋め込み時の機種選定から、症状や病態に応じた設定の変更なども、専門的な知識を有するものが対応いたします。

最近の機種は、条件付きですがMRIも撮像可能となり、当院でも木曜日にMRI対応ペースメーカーの方の撮像を行なっています。

また、遠隔モニタリングという機械の機能や電池やリードの状態、さらには不整脈のイベントをご自宅から自動的に送信するシステムを積極的に導入しています。遠隔モニタリングを導入することにより、従来の外来よりも異常や不整脈のイベントを早期に発見でき、治療などに反映されることが示されています。当院でも、臨床工学技士と医師が協力して、データを定期的に観察しています。また主治医とも情報を共有し治療方針などの相談を行い、患者さんに安心と安全を提供し、さらには外来時間の短縮や通院回数の減少を通じて患者さんの負担軽減も目指しています。

2 頻脈性不整脈

頻脈性不整脈には、心房を原因に含む上室性と、心室に原因がある心室性があります。

2.1 上室性
2.1.1 心房細動
正常な洞調律と心房細動
正常な洞調律と心房細動(心房細動週間ウェブサイトより)

心房細動は、年齢とともに発症が増えてくる不整脈で、動悸で受診時に発見されたり、検診で指摘されたりと日常最もよく目にする不整脈です。年齢以外にも心臓の病気や甲状腺のホルモン、高血圧、飲酒などが要因となることもあります。心房細動は、心房が高頻度で興奮することにより、規則正しい収縮が失われ、震えているだけのようになる病気です。脈が不規則かつ早くなることが多く、動悸といった症状を呈することや、心不全発症やその増悪の要因となること、また血流の停滞などにより血栓が形成され、脳梗塞の原因になることが知られています。

心房細動は、心房細動が出たり止まったりと洞調律と心房細動が入り混じる発作性と、心房細動が続いた状態である持続性に大別されます。年齢、心房細動の持続した期間、左心房の大きさなど、その状況に応じて治療法もご提案します。

抗凝固療法は、脳梗塞を予防するために行われる薬物療法です。心房細動に伴う脳梗塞のリスクには、年齢、高血圧、糖尿病、心不全や脳梗塞の既往などが知られており、そのリスクに応じて、適切なタイミングで抗凝固療法をご提案します。後述するカテーテルアブレーションを受ける方はその周術期には必須となります。

レートコントロールは、脈が不規則かつ早くなることが多く、動悸といった症状や、心不全発症やその増悪の要因となるため、心房細動時の脈拍を遅くする治療法で、基本的には薬物療法となります。長い年数続いたり、心房が非常に大きくなってしまった持続性心房細動では、主な治療法ですが、発作性の方にも有効な治療法です。

リズムコントロールは、心房細動の発症を抑制、もしくは停止させ、洞調律を維持する治療法で、カテーテルアブレーションと薬物療法があります。症状のある発作性心房細動や持続期間が短く心房の拡大の軽度な持続心房細動では、主な治療法となりえます。薬物療法では長期に渡る洞調律維持が困難なことなど限界があること、近年のカテーテルアブレーションの飛躍的な発展によりその効果も向上していることから、病態などに応じてカテーテルアブレーションを主にご提案します。

カテーテルアブレーションは、心房細動の発症契機とその維持に、肺静脈という肺から左心房へ繋がる血管が非常に大事な役割をしていることがわかり、治療法が開発され、肺静脈と左心房の電気的な繋がりを断つ治療(電気的肺静脈隔離術)が、世界的にスタンダードな治療法となっています。カテーテルアブレーションの進歩は飛躍的であり、治療の奏功率や安全性が改善されています。当院では、事前にCTを撮像し、3Dマッピングというシステムを用いて、透視による被曝量を抑え、さらには安全に治療できるよう努めています。また、病態とともに事前のCTや心臓超音波で得られた肺静脈および左心房の解剖学的な構造や心房の大きさなどを加味して、高周波を用いたアブレーションとクライオバルーンを用いたアブレーションを使い分けています。高周波アブレーションもイリゲーションカテーテルや可変式シースといった効果的な焼灼が行えるシステムを用いています。個々の病態によっても異なりますが、発作性心房細動では3-5年間で70-80%、持続性心房細動では3-5年間で60-70%で1回の加療で心房細動が出なくなります。心房細動の契機となりうる肺静脈以外の起源の期外収縮や術中に誘発された心房頻拍も積極的に治療することにより、1度の治療で最大限の効果を得られるよう心がけています。心臓や血管を損傷したり、脳梗塞などの血栓塞栓症、食道損傷などで、重篤な合併症となることは1%に満たないとされております。当院でも、細心の注意と準備のもとカテーテルアブレーションを行なっていますが、合併症が疑われた場合には適切かつ迅速に対応、加療いたします。

3Dマッピングシステムのイメージ

イリゲーションカテーテルのイメージ

可変式シースのイメージ

クライオバルーンのイメージ(提供 日本メドトロニック株式会社)

発作性心房細動に対して行った クライオバルーンを用いた肺静脈隔離術

発作性心房細動に対して行った クライオバルーンを用いた肺静脈隔離術

発作性心房細動に対して行った 高周波を用いた肺静脈隔離術

持続性心房細動に対して行った高周波を用いたBOX隔離術(肺静脈、左房後壁隔離術)

2.1.2 発作性上室性頻拍症

発作性上室性頻拍症は、心房(と心室)が高頻度で興奮することにより、脈が規則正しく早くなる不整脈です。動悸といった症状を呈することが多く、当然始まり当然止まるといった症状も認めることがあります。発作性上室性頻拍症には、房室結節回帰性頻拍(房室結節に特徴の異なる2本の伝導路(2重伝導路)があることにより起こります)、房室結節回帰性頻拍(WPW症候群に伴う頻拍もこの一部です。副伝導路(Kent束)と呼ばれる伝導路が房室結節以外に存在することにより起こります)、心房粗動、心房頻拍などの不整脈が含まれます。

発作性上室性頻拍の治療には、頻拍の停止と頻拍の予防、根治に分けられます。頻拍の停止には、内服薬で有効な場合、点滴薬が有効な場合、心房粗動や心房頻拍などでは電気ショックが必要な場合があります。頻拍の予防は、基本的に内服薬で行います。頻拍の根治は、カテーテルアブレーションを行います。頻拍の種類によって、その治療部位が異なりますが、一般に電気生理学的検査で頻拍の種類を確定し、そのまま治療に移ります。カテーテルアブレーションの治療効果が高いので、発作があり、症状があって、お元気な方には、積極的にアブレーションをご提案しています。

2.2 心室性
2.2.1 心室頻拍

心室頻拍は、心臓に全く病気がないのに起こる場合(特発性)や心臓に心筋梗塞や心筋症などの病気がある場合があります。心室頻拍は、心室が高頻度で興奮することにより、脈が規則正しく早くなる不整脈です。無症状のこともあれば、動悸といった症状を呈することやめまいや失神の原因となります。心臓に病気がある場合、心不全の増悪や心臓突然死の原因となることもあります。

心室頻拍の治療は、心臓に病気のない特発性の場合、症状や頻度によって、経過を見たり、内服薬での加療であったり、カテーテルアブレーションを行うこともあります。心臓に病気がある場合は、その原因に対する加療(虚血や心不全に対して)、不整脈に対して内服薬での加療、カテーテルアブレーションを行うこともあります。心機能が悪い方や難治性の方では埋め込み型除細動器(ICD)をおすすめします。ICDに関しては別項をご参照ください。

2.2.2 心室細動

心室細動は、心臓突然死に至ることがある不整脈で、心室が痙攣したような状態となり、心臓のポンプとしての機能がほぼ完全に失われた状態になります。心室細動になってしまったら、電気ショックが唯一有効な治療法です。心室細動は、心臓に心筋梗塞や心筋症などの病気がある場合、Brugada(ブルガダ)症候群やQT延長症候群といった心臓を動かす電気のシステムの病気がある場合に起こります。心室細動を起こして救命された方(2次予防)はもちろん、起こすリスクの高いと判断される方(1次予防)には、埋め込み型除細動器(ICD)をおすすめします。ICDに関しては別項をご参照ください。

3 カテーテルアブレーション

カテーテル配置のイメージ
カテーテル配置のイメージ

対象疾患は、心房細動(発作性、持続性)、発作性上室性頻拍症(房室結節回帰性頻拍、房室結節回帰性頻拍(WPW症候群)、心房粗動、心房頻拍)、心室頻拍です。入院をして行う治療です。治療時間や治療の奏功率は、対象となる不整脈などによって異なってきますが、基本的な流れは以下のような感じです。

治療の前日までにご本人、ご家族に病状や治療内容につきご説明を致します。入院中の流れや内服の有無等は看護師からもご説明いたします。

治療は、カテーテル室で行います。治療は、看護師、医用工学士など多くのスタッフのもと行われます。

  1. 患者さんは仰向けの体勢で、鎮静薬の注射により、基本的に眠ている状態で治療を行います。当院では基本的に全身麻酔でアブレーションを行っています。
  2. 頸部(首)および鼠徑部(足の付け根)に局所麻酔を行い、カテーテルを挿入し、カテーテル先端を心臓の各部位に配置します。血管への穿刺には、超音波を用いて安全な挿入を心がけています。
  3. 電気生理学的検査を行い、的確な診断を行い、透視以外にカテーテル先端の位置情報を記録できる3Dマッピングシステムを用い、有効かつ安全な治療ができるよう心がけています。専門的な知識を持つ医用工学士などが治療をサポートしてくれます。

治療中は、心電図、血圧、酸素飽和度などをモニターし、看護師共に安全に行えるよう心がけています。全身麻酔の際には、麻酔科の先生方に協力していただいています。

通常、術後は穿刺部の止血のためベッド上での安静が5-6時間必要となります。翌日からは通常に歩行できるようになり、検査や経過に問題がなければ翌々日には退院となります。

カテーテルアブレーションの進歩もあり、治療に伴い重篤な合併症となることは1%に満たないとされております。当院でも、細心の注意と準備のもと行なっていますが、合併症が疑われた場合には適切かつ迅速に対応、加療いたします。

4 デバイス治療

デバイス治療とは、ペースメーカー、埋め込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法付き埋め込み型除細動器(CRT-D)、両心室ペースメーカー(CRT-P)などの総称です。

入院をして行う治療です。治療時間は、埋め込むデバイスの種類などによって少し異なってきますが、基本的な流れは以下のような感じです。

治療の前日までにご本人、ご家族に病状や治療内容につきご説明を致します。入院中の流れや内服の有無等は看護師からもご説明いたします。

治療は、カテーテル室で行います。治療は、看護師、医用工学士など多くのスタッフのもと行われます。

1.患者さんは仰向けの体勢で、鎮静薬の注射により、基本的に眠ている状態で治療を行います。

2.前胸部(主に左)に局所麻酔を行い、皮膚を5cm程度切開し、リードと呼ばれる電線を挿入し、リード先端を心臓の各部位に配置します。挿入部位は、リードの負担が少なく、合併症が起こりにくい部分を選んで、安全な挿入を心がけています。

3.本体を収納するポケットを皮下に作成します。抗血小板薬や抗凝固薬を飲まれている方が多いので、しっかり止血します。切開線を縫合し、圧迫して終了です。縫合には自然に吸収される糸を用いますので、抜糸は必要ありません。

治療中は、心電図、血圧、酸素飽和度などをモニターし、看護師共に安全に行えるよう心がけています。

通常、術後から鎮静の効果がなくなれば、通常に歩行できるようになります。2日程度で圧迫を解除して、検査や経過の問題がなければ早期に退院が可能となります。

デバイス治療に伴い重篤な合併症となることは1%に満たないとされております。当院でも、細心の注意と準備のもと行なっていますが、合併症が疑われた場合には適切かつ迅速に対応、加療いたします。

4.1 ペースメーカー

ペースメーカーの対象疾患は、徐脈性不整脈である洞不全症候群、房室ブロック、徐脈性心房細動などです。ペースメーカーは、設定した脈拍数を下回った時に電気刺激を出して、脈拍数をサポートします。ペースメーカーに代わる薬物療法はありません。

当院では、徐脈性心房細動、血管のアクセスが少ない方や易感染性の方を中心に、洞不全症候群、房室ブロックでもペーシングの頻度が少ないなどの理由の方には、リードレスペースメーカーの埋め込みも行っています。手術の方法も上記の方法とは異なります。

従来のペースメーカー、リードレスペースメーカーを疾患や状態に合わせて適切にご提案します。

ペースメーカーのイメージ(提供 日本メドトロニック株式会社)

経静脈リードを用いたペースメーカーのイメージ(提供 日本メドトロニック株式会社)

リードレスペースメーカーのイメージ(提供 日本メドトロニック株式会社)

4.2 埋め込み型除細動器(ICD)

埋め込み型除細動器(ICD)の対象疾患は、頻脈性不整脈のうち、心室性である心室頻拍、心室細動です。一度を心室頻拍、心室細動起こした方に対する2次予防、起こすリスクの高いと判断される方(心機能の悪い方、特定の疾患で突然死の家族歴のある方など)に対する1次予防とがあります。ICDは、心臓が異常に早く拍動して血液を送るポンプとしての役割を十分に果たせなくなったとき作動し、不整脈を止め、心臓に正常な拍動を取り戻す働きをします。不整脈を止める方法に、心室細動には電気ショック、心室頻拍にはまず抗頻拍ペーシング(より早く電気刺激を入れて止める方法と)と電気ショックがあります。心室頻拍に対しては、心身共に負担の少ない抗頻拍ペーシングで極力停止できるよう設定を心がけています。脈が遅くなった時には、ペースメーカーと同等の働きも併せ持っています。

4.3 心臓再同期療法付き埋め込み型除細動器(CRT-D)、両心室ペースメーカー(CRT-P)

心臓再同期療法付き埋め込み型除細動器(CRT-D)、両心室ペースメーカー(CRT-P)の対象疾患は、心臓に心筋症や陳旧性心筋梗塞などの病気があり心機能が落ちている方で、心不全症状があり、心電図の幅が広い方が対象です。通常の心室では、電気が速やかに心室全体に伝わり、心室全体が同期して興奮することにより、効率よくポンプとしの機能を発揮しています。心機能が低下した心不全の方の一部には、心室内の電気の流れが悪くなり(脚ブロックや伝導障害)、心室の興奮が非同期状態となり、ポンプとしの機能が効率よく発揮できなくなっている方がいます。心臓再同期療法(CRT)では、右心室に留置するリードに加え、さらにリードを冠状静脈という血管を介して左心室の表面に置き、基本的に心臓を挟み込むように電気刺激し、心室の非同期状態を再同期させ、効率よくポンプとしての機能を発揮できるようにサポートします。当院では、心臓超音波検査、CT、MRI、アイソトープ検査などを駆使して、術前から最も効率よくポンプ機能を生かすためのリードの位置を想定して手術に望んでいます。また、心臓再同期療法(CRT)の効果が最大限発揮できるような設定にも努めています。心臓再同期療法(CRT)には、除細動機能もついたCRT-Dとペーシング機能だけのCRT-Pとありますが、疾患や状態に合わせて適切にご提案します。

4.4 デバイス外来、遠隔モニタリング
遠隔モニタリングのイメージ
遠隔モニタリングのイメージ

ペースメーカー、埋め込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法付き埋め込み型除細動器(CRT-D)、両心室ペースメーカー(CRT-P)といったデバイスの治療後は、通常の外来ではなくデバイス外来に受診していただきます。機械のチェックや電池残量の確認、設定の再確認を行います。当院では、火曜日、木曜日の午後隔週で行っています。

ペースメーカー、埋め込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法付き埋め込み型除細動器(CRT-D)、両心室ペースメーカー(CRT-P)といったデバイスの設定も個々の病態にあった設定が必要なことも多く、埋め込み時の機種選定から、症状や病態に応じた設定の変更なども、専門的な知識を有する医師が対応いたします。

最近の機種は、条件付きですがMRIも撮像可能となり、当院でも各科から検査の依頼があった場合、木曜日のデバイス外来に合わせて、MRI対応機種の方の撮像を行なっています。

また、遠隔モニタリングという機械の機能や電池やリードの状態、さらには不整脈のイベントをご自宅から自動的に送信するシステムを積極的に導入しています。遠隔モニタリングを導入することにより、従来の外来よりも異常や不整脈のイベントを早期に発見でき、治療などに早く反映されることが示されています。当院でも、臨床工学技士と医師が協力して、データを定期的に観察しています。また主治医とも情報を共有し治療方針などの相談を行い、患者さんに安心と安全を提供し、さらには外来時間の短縮や通院回数の減少を通じて患者さんの負担軽減も目指しています。

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