TOPICS2024

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2024年度のTOPICSを11項目ご紹介します。

1. 呼吸器センター内科 薬剤性肺障害マネージメントと気管支鏡検査

 がんの薬物療法は日進月歩であり、難治性であった腫瘍が免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の登場により良好な治療成績を得られる時代になりました。薬剤性肺障害は全てのがん腫の治療で起こりうる、時に致死的な合併症です。有効な化学療法の継続ができるか否かが患者さんの予後を左右することもあります。呼吸器センター内科ではこのような患者さんの治療継続が可能かを適切に判断するべく「抗がん剤副作用・合併症マネージメントセンター」内に肺合併症外来の相談窓口を設置し、薬剤性肺障害に対して積極的に気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄±クライオ生検)をおこない、主治医の先生方と方針を議論するカンファランスを展開しています。2023年度の薬剤性肺障害を含む気管支鏡総実施件数は384件と前年度比+99件でした。引き続き全診療科に対して開かれた相談窓口を目指して活動して参ります。

2. メンタルヘルス不調により休職した方の復職を支援します!

 「はたらくひとのメンタルヘルス不調」(心理部作成冊子、院内掲示&病院HP)をご覧になりましたか?

 精神科・心理部では、メンタルヘルス不調により休職した方の復職支援に力を入れ、実績を上げています。復職後の安定した就労の継続を目指し、集団の取り組み「復職支援グループ療法」と個人の取り組み「心理相談」を実施しています。併用も可能です。

 「復職支援グループ療法」では、不調に至った経過を職場要因と個人要因の両面からふりかえり、対策を考え、セルフケアのコツを学びます。「心理相談」では、個人の性格やおかれた環境などをもとに、各自の課題に焦点を当て自己理解を深めます。研究報告では、いちど復職しても再休職する人が多いことが指摘されています。「心理相談」では復職後も継続して支援しますので、再休職に至る前に対策を考えていくことができます。

3. 奈良宣言

 日本肝臓学会は20236月、ALT値が30を超えている人は慢性肝臓病が潜んでいる可能性があるため、かかりつけ医に受診することを提言しました(奈良宣言)。当院肝臓内科は多数例のバックアップデータを提示し、宣言の策定に携わらせて頂きました。この内容は2024411日にNHK総合で放送された「あしたが変わるトリセツショー」でも紹介されています。(https://www.nhk.or.jp/program/torisetsu-show/2024_kanzo.pdf

4. カテーテル左心耳閉鎖術(Watchman)の開始

 20245月より当院でもカテーテルで左心耳を閉鎖する、Watchmanデバイスの治療を開始しました。治療は大腿静脈からカテーテルを挿入し左心耳を閉鎖することで、心房細動の患者さんが抗凝固療法を中止することを可能とする低侵襲の治療技術です。当院ではGlobal implanterの資格を有するカテーテル治療専門医と心エコー専門医、麻酔科医などがチーム一丸となって取り組んでおります。34日の入院期間で施行可能で術後の回復も非常に早いことが特色です。心房細動で抗凝固療薬を服用する必要がある患者さんの中で、消化管出血や脳出血、血尿、鼻出血、転倒による出血等でお困りの方がいらっしゃいましたら、是非ご紹介を検討いただければ幸いです。

5. がん治療と将来の妊娠の両立について支援します がん・生殖サポートチーム

 抗がん剤や放射線治療、手術などのがん治療によって、妊娠するために必要な臓器や機能が影響を受けることが知られています。がん・生殖サポートチームでは、がん治療前に妊娠に必要な能力を温存しておく「妊孕性温存治療」や、がん治療後の妊娠に関するご相談に、多職種で対応しています。妊孕性温存治療として精子・卵子・胚(受精卵)の凍結保存を実施しております。その他、検査のみのご希望(精液検査・卵巣機能検査など)や、カウンセリングのみのお申し込みも受け付けます。がん治療後の不妊治療、閉経後のホルモン補充療法、ならびに助成金のご案内なども行っております。

 当院にかかりつけでない方のご相談も可能です。お気軽にご相談ください。

6. 本院精神科、分院精神科とも抑うつ状態、適応障害の検査入院を始めました

 うつ状態や適応障害には、さまざまな要因が関与しています。①脳梗塞や甲状腺疾患などの身体的な要因、②性格のかたよりや発達障害といった心の特性、③職場や家庭といった環境的な要因、などです。この検査入院コースでは、7日間の入院期間中に、不調をきたしている要因についてお話をうかがい、集中的に検査をおこなって、治療の方針を明確にすることを目指します。

 対象は18歳以上の方です。他の病院・クリニックにかかりつけの場合、検査入院が終わり次第、結果をご送付いたします。うつ状態で治療方針の検討が必要なかたがおりましたらご紹介ください。また精神科かかりつけがない場合はまず当科外来へご紹介いただければ入院の要否、精神科外来フォローも含め検討いたします。

 案内パンフレットを病院ウェブサイトに掲載しております。

7. 細胞療法センター新設

 20241月より細胞療法センターを開設しました。当院は、臍帯血移植をはじめとした造血細胞移植の実施件数が多く、移植後の主な合併症の1つである移植片対宿主病(GVHD)に対して、骨髄由来間葉系幹細胞を用いた治療を導入しています。また、完治が難しい再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫や多発性骨髄腫に対して、キメラ抗原受容体(CAR-T細胞療法を積極的に行っています。細胞療法では、アフェレーシス、細胞の調製・管理、治療の過程において、医師、看護師、臨床検査技師、臨床工学技士など多くの職種が関与します。当院では、輸血・細胞治療部、血液内科、臨床工学部、看護部および医療安全部といった関連部署が、当センターを通じて密に連携し、安全で確実な細胞治療の実現を目指しています。

8. ロボット支援下子宮全摘術の導入

 当院産婦人科ではこれまで、子宮筋腫や子宮腺筋症といった良性疾患や、初期の子宮体癌に対し、創が小さく身体への負担が少ない手術として腹腔鏡手術を行ってきましたが、2023年夏よりロボット支援下(ダビンチ)での子宮全摘術を開始いたしました。ロボット支援手術は腹腔鏡手術をさらに発展させた手術法で、拡大視野、3D3次元)視野により細かな血管や神経といった体の組織が見やすく、またロボットを使用することでより微細な動きができるため、腹腔鏡手術よりも容易に安全な手術ができることがメリットです。現在では患者さんのニーズに合わせ、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術の両方を行っております。今後更なるロボットの多様化やさまざまな技術革新を積極的に導入しつつ、より安全で回復の早い手術を提供していきます。

9. 虎の門産婦人科における腟式鏡視下手術(vNOTES)手術の導入

 産婦人科領域における全ての低侵襲手術に対応すべく、”腟式鏡視下手術(vNOTESを導入しました。従来施行されている”腹腔鏡手術”は腹部に数mm~1cm程度の創部を要しておりましたが、産婦人科ならではのアプローチ方法であるvNOTESシステムにより、腹部に傷のない””腹部手術”が可能となりました。癒着の少ない疾患(子宮疾患、骨盤臓器脱、内膜症性嚢胞を除いた卵巣疾患)で対応しています。開腹手術のみならず、従来の腹腔鏡手術より術後回復が早く、短期間の入院での治療が可能です。患者さんのご紹介を検討していただければ幸いです。

10. 感染症センターの新設

 感染症センターの役割は、主に以下の4点について、職種の壁を越えて連携しつつ対処することとしています。病院内からのみならず、連携する病院/診療所から幅広く相談を受ける体制をとります。感染関連で何かお困りことがあれば、まずは感染症センターへご相談下さい。

①感染症診療:特殊な感染症(免疫不全患者の感染症や海外渡航歴のある患者の感染症)からCommon diseaseまで幅広い感染症の初期治療の基点となります。②感染対策:医療関連感染の発生防止、発生した場合の速やかな初期対応に取り組みます。例えば、診療所などで発生した針刺しの対応などもご相談ください。③教育:感染症診療、感染対策のための教育研修を提供し、地域の感染対策向上に貢献します。地域の感染症診療/感染対策のリーダーとなる人材を育成します。④地域連携:地域の病院やクリニックとの連携を強化します。地域のサーベイランスデータを集約し、データを還元いたします。

11. 脊椎センター FESS “full-Endoscopic Spine Surgery”を導入しました

 従来腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡手術は、MEDMicro Endoscopic Discectomy)「内視鏡下椎間板摘出術」という方法で、直径16mmの操作管を挿入して椎間板切除を行なっておりました。FESS“Full-Endoscopic Spine Surgery”の略で、「完全内視鏡下脊椎手術」のことです。直径7mmの外筒を用いて行う手術手技で、現在行われている脊椎の手術の中で最も侵襲が小さいものです。小さい皮膚切開で手術を行えるので術後の疼痛も少なく、回復も早いとされており、手術翌日の退院も可能です。現在は症例により従来のMEDと新たなFESSを使い分けて手術を行なっておりますが、今後さらに適応を広げていきたいと考えております。脊椎症例でお困りの方がいらっしゃいましたら是非脊椎センターへのご紹介をご検討ください。

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