虎の門病院分院が梶ヶ谷の地に開かれて、2025年で60年目を迎えます。これまで、腎不全患者さんに対する血液透析や腎移植、ウイルス性肝炎の患者さんに対するウイルス排除を目指した内科的治療など、当院はいくつかの分野で日本や世界の先陣を切る先進的な医療に取り組んで参りました。近年では、宇田川晴司前分院長の下で、外科診療の充実をはかると共に診療科の数を増やしつつ、多様な医療の必要性に応えるべく体制の構築を進めてまいりました。また、2年前からは二次救急医療を担う病院となり、これまで以上に地域医療に貢献することを目指しています。
わが国は世界に先駆けて超高齢社会に突入し、今日においても高齢者はますます増加しています。最近では90歳を超える患者さんが、おひとりで外来を受診されることもごく普通の光景になっています。この様な時代において、私達は、自ずと医療の役割が変化していくことに向き合わざるを得ません。ひとりひとりにとって最善の医療を考えることを通して、私達は、当院の基本理念にある「病者への献身と奉仕」を実現することを大切にしています。その実現のためには個別化と最適化という視点が重要であり、患者さんやそのご家族と医療者との間でしっかりと情報共有することを積極的に進めてまいります。また、その実践においては、良い知らせであっても良くない知らせであっても、常に患者さんに誠実に向き合うという揺るぎない姿勢を保ち続けることを心がけ、人としての温かさを感じていただけるように努めてまいります。
当院の基本理念のもうひとつの柱である「医学への精進と貢献」は、設立時から掲げられている私達の使命となっています。医療を支える医学は日進月歩で進歩しており、十年ひと昔といえるほど、その飛躍的な発展には目を見張るものがあります。当院設立に尽力された冲中重雄先生の言葉には、「書かれた医学は過去の医学であり、目前に悩む患者の中に明日の医学の教科書の中身がある」というものがあります。当院の医療者は、まだ解決されていない課題に答を見出すべく、すなわち「明日の医学の教科書の中身」を確立すべく、「目前に悩む患者」さんに真摯に向き合うことにより、新しい医学を築くための礎となることを自らに課しています。そのような気概を持って日々取り組んでいる医療者の集う病院として、皆様をお迎えできるよう私達は心がけています。
当院の職員は、各々の持ち場ではいうまでもなく、皆で広く連携して、健康に不安を抱える全ての人々に誠実に向き合い、患者さんとの情報共有を大切にした温かい医療を提供することで地域に貢献してまいります。