地元に根を下ろし、地域の医療機関や患者さんとの関わりを強くするなかで、虎の門病院分院の役割も年々、変化しています。分院は、慢性疾患の治療を中心とする慢性疾患治療センターとして、1966(昭和41)年に開院しましたが、そうした成り立ちを引き継ぎながらも、全方面に応えられる総合病院としての機能がより一層求められています。
本院では、地上19階建ての高層病院の竣工を2019年に控えていますが、そこでますます分院において重要度を増すのが本院各科との連携強化です。規模が限られる分院がより幅広い対応を可能にするためには、中期的には医師をはじめとするスタッフのローテーションが欠かせませんが、疾患によっては、その都度より機動力あるスタッフの交流が必要になります。
もちろん分院としての人材の強化も必須のテーマです。一人ひとりの医師が高度に特化した分野の専門家であるとともに、同時にもう少し幅広い視野に立った医療を実践することで、分院全体の対応の範囲が広がります。さらに、虎の門病院が最も得意とする、互いの強みをわきまえた医師同士の緊密な協力関係により、対応力はさらに強化されます。
幸いにも郊外に位置する分院には、十分な研究環境が用意されています。当院の理念のなかに「医学への貢献」がありますが、臨床研究はもとより基礎研究に至るまで、各科がその時代その時代の最先端の医療を実践する気概を持って臨む姿勢も大切にしたいと思います。このように、さまざまな角度から分院の機能を高めることで、地域の医療にさらに貢献できる体制が整うと考えています。
これからの時代、高齢者医療への取組み強化は当然ですが、近年、医師と患者さんの関係にも注目が集まっています。私は、両者が互いに相談しながら答えを見つけていく関係が理想と考えます。患者さんにとって何がベストかは当然、お一人おひとり異なります。そこで、何を第一に治療計画を立てるかをきちんと説明をし、ご要望を伺いながら、医師と患者さんのコンセンサスを得ることが重要になるのです。特に分院では、こうした医療への基本姿勢を改めて押し進めたいと思います。真のプロフェッショナルとは「オープンでいられること」だと思います。セカンドオピニオンへの対応はもちろん、患者さんに対しては、常にオープンな姿勢で接し信頼関係をつくり上げていきたいと思っております。