MESSAGE分院長ご挨拶
虎の門病院分院における
卒後臨床研修2.0

虎の門病院は東京都港区虎ノ門にあります。虎の門病院分院は川崎市高津区梶ヶ谷にあります。「虎ノ門」は地名ですが、「虎の門病院」は立地にこだわりません。虎の門病院分院は港区の本院とは異なる特色をもった病院として発展してきました。
さて、虎の門病院では、卒後臨床研修の必修化以前から新卒医師を毎年20名規模で公募しており、時代を先取りした臨床研修を提供してきました。その中で、分院は腎臓疾患や肝臓疾患をはじめとして特色ある領域の研修を中心に重要な役割を担ってきました。卒後臨床研修制度が「医師の新臨床研修制度」として2004年に始まってから20余年を経て、虎の門病院分院では、新たに卒後臨床研修2.0として、独自のプログラムを整備いたしました。
医師のキャリアパスは多岐にわたります。高度に専門化された領域を究める道もあれば、幅広く経験を積んで、学んだことを地域に密着して多くの患者さんに還元していく道もあります。もちろん、幅広く経験を積んだ後に、専門性を研ぎ澄ます道を選ぶ、という生き方もあると思います。医学の視点からは、今までもこれからも専門領域を究める道は絶えることはありません。一方で、医療の視点からは、高度に高齢化の進んだわが国においては、地域の人々の健康を幅広く支援することが必要とされており、今後ますますその重要性は高まっていくと思われます。
虎の門病院分院の基本方針の大きな柱は、地域の中核病院として地域の要請に応えることであり、この考え方に従って病院を運営し、医療を提供しています。高度急性期医療の提供を基本方針とする本院とは異なる方向性を持つ分院の特性を活かし、そして社会のニーズの変化に応えるため、虎の門病院分院では新規に卒後臨床研修プログラムを設定しました。これは、医師としての基礎を固めることを柱として、安全な医療の提供を通して、広く地域に貢献できる医師の育成を目指すものです。研修を通して、患者中心のチーム医療を安全に実践するために、医師としての基本的能力の習得だけでなく、医療スタッフや連携する医療機関とのコミュニケーション能力、患者さんや家族への気配りなどを身に付けます。さらに、医学的な思考能力と医学の進歩に貢献する姿勢を併せて習得し、最新のエビデンスに基づいた医療を実践することも目標としています。
虎の門病院分院は300床という規模のため、診療科と診療科、医師と看護師をはじめとする医療スタッフとの距離がとても近いという特徴があります。研修医の皆さんには、分院で働く全ての人達と深く関わりながら、日常の診療がどのように行われているのか、地域包括ケアなど他機関や地域との連携による医療がどのようなものなのかを実際に体験していただきます。さらに、川崎市や神奈川県内のその他の地域に立地する特徴ある複数の医療機関や虎の門病院本院で研修していただくことにより、幅広い経験を効率良く積んでいただくことができます。
卒後臨床研修プログラムを終えれば研修医の皆さんは、自身が目指すキャリアパスを選択することになります。重要な選択を前に、研修中に経験したいことや取り組みたいことがあれば遠慮なく申し出てください。将来の選択肢と可能性を拡げ、ひとりひとりの信じる医療の道を邁進していくための基礎を鍛錬できるよう、私達は最善の努力をいたします。
虎の門病院分院長 竹内 靖博