消化管センター外科(下部)

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下部消化管(大腸、小腸)の疾患を中心に手術を行っております

令和6年(2024年)の手術件数は以下の通りです。
大腸癌103件(全例を鏡視下手術:ロボット手術43件、腹腔鏡手術60件)
虫垂炎 47件(全例を腹腔鏡手術)
鼠径ヘルニア37件(腹腔鏡手術:27件)
その他腹壁ヘルニア11件
腸閉塞9件(腹腔鏡手術8件)
肛門疾患(痔核・痔瘻・直腸脱)18件
令和6年には、消化管センター外科全体で年間507件の手術を行いました。

分院消化管センター外科(下部)実績2024.jpg

鏡視下下手術を得意としています

戸田部長、福井医長、岡崎医員の3名のスタッフ全員が内視鏡外科技術認定医の資格を取得しており、ロボット手術術者資格(daVinciとHugo-RASの 2機種)も有しています。
令和6年には、大腸癌手術・虫垂炎手術の全例を鏡視下に行い、鼠径ヘルニア手術・腸閉塞手術などについてもその大部分を腹腔鏡下に施行しています。

大腸癌鏡視下手術について

日本内視鏡外科学会による全国アンケート結果によると、2021年時点で大腸癌の8割以上が鏡視下手術(ロボット手術、腹腔鏡手術)で行われており、今や大腸癌手術の主流です。大腸癌鏡視下手術は、5~12mmの小さな傷を5,6か所あけてカメラと細長い器具を挿入し、腫瘍のある腸とその周りのリンパ節を含む腸間膜を切除する手術です。開腹手術でも鏡視下手術でもおなかの中で行うこと(腸と腸間膜を切除する)は一緒ですが、違うのは創部の傷の大きさです。開腹手術ではおよそ20~30㎝であるのに対し、鏡視下手術では一番大きな傷が3~6cm(切除した腸を取り出すため小さな傷を広げる)です。そのため鏡視下手術の方が創部の痛みが少なく早期に動けるようになり、社会復帰が早くなります。なお、手術時間は鏡視下手術の方が長くなります。
 当初は手術負担の少なさ=「低侵襲性」が鏡視下手術のメリットと考えられていましたが、手術器具の進歩もあり「手術手技の精密さ」もメリットであると考えられています。大きな進歩の一つが腹腔鏡画像のハイビジョン3D化でした。当科ではハイビジョン3D腹腔鏡の臨床導入に携わり、これを早期導入しました。ハイビジョン3D腹腔鏡により、肉眼で見えないものが見えるようになり、手術の精度が向上しました。特に狭い骨盤内での手術となる直腸癌の手術において、ハイビジョン3D腹腔鏡の良好な視野により、がんをきれいに取り去りつつ周囲臓器を温存する、という質の高い手術が可能となっています。

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3Ⅾ眼鏡をかけて腹腔鏡手術を行います

手術操作を補助する器具として手術支援ロボットがあります。器具が真っ直ぐの腹腔鏡手術に対して、ロボット手術では多関節器具が人の手のように曲がって手術操作が可能です。そのため、特に狭いところでの精密な手術操作がやりやすくなります。当院では2024年から手術支援ロボットHugo-RASを導入し、2025年5月の時点で70件を超えるHugo-RASを用いた大腸癌ロボット手術を行っています。
これを用いてより精密に癌を切除して周囲臓器を温存できるよう日々努めています。

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手術支援ロボット「Hugo-RAS」

当科の最新の取り組みをご紹介しましたが、最後に強調したいのは結局手術は外科医が行う、ということです。虎の門病院分院 消化管センター外科は上部グループも下部グループもスタッフ全員が内視鏡外科技術認定医です。鏡視下手術は技術認定医でなくても行えますが、手術メンバーに内視鏡外科技術認定医が入っていると手術成績が良くなることが複数の研究からわかっています。虎の門病院分院 消化管センター外科は質の高い最良の鏡視下手術を提供し、受診される方が少しでも良くなるように日々努力し続けます。

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消化管センター外科(上部・下部)

大腸癌鏡視下手術の適応

当院は大腸癌全例を鏡視下手術の適応とします。
一般に大腸癌鏡視下手術の適応とならない場合には、癒着例、他癌合併例、腸閉塞例、他臓器浸潤例、腹膜炎例、心疾患や呼吸器疾患の合併例などがあり、当院ではそのような時も多くの場合は鏡視下手術を行います。
癒着例とは、多くは開腹手術の既往があり、おなかの中の癒着(臓器同士のくっつき)が強い例で、手術時間は延長しますがほとんどは鏡視下手術が可能です。
他癌合併例とは、おなかの中の他の癌を同時切除する場合ですが、開腹創の縮小化が期待できる場合は鏡視下手術を行います。
腸閉塞例は、大腸癌のため腸閉塞状態で手術となる場合で、おなかの中が拡張した腸管で満たされているため腹腔鏡の挿入自体が困難です。しかし当院では消化器内科医師の協力により多くは減圧処置が可能であり、鏡視下手術の適応となる場合が多いです。
他臓器浸潤例は、大腸癌が周辺臓器に浸潤して大きな塊になっていたり、浸潤臓器の合併切除が必要であったりするため、困難ではありますがほとんどの症例では鏡視下手術が可能です。
腹膜炎例は、癌の部分の腸管穿孔による腹膜炎で緊急手術となる場合で、迅速な対応が必要であると適応とならない場合があります。
心疾患や呼吸器疾患等の合併症例で全身麻酔がかけられない場合は適応となりませんが、全身麻酔が可能と判断されれば術後はその低侵襲性が利点であるため鏡視下手術を行います。

下部直腸癌に対する非手術療法(Non-Operative Management: NOMもしくはwatch and wait治療)

近年、工夫して化学放射線療法を行うと2~3割の確率で直腸癌が見えなくなってしまい、その場合に手術をしないで経過観察すると7,8割の方に手術をしなくて済む、と海外で報告されるようになってきました。下部直腸癌は手術をして治癒できても、人工肛門や術後の後遺症(排便・排尿・性機能の障害)が問題になります。当科では2010年より本院放射線治療科と協力して下部直腸癌に対する術前化学放射線療法を施行してきた豊富な経験から、限られた一部の方にこの非手術療法を行っています。ただしこの治療は標準治療ではなく、治療や効果の判定は特殊なので十分な経験を持つ施設で行うほうが良いです。

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