「倫理観を備えた自律した看護師」を目指して

 副院長・看護部長として、看護部は主体性をもって時代のニーズに適応していく組織であり、生き生きと躍動感のある部門でありたいと考えています。積極的に仕事に取組み、新しいことに挑戦する「発信する看護部」を目指しています。

 人口動態が超高齢多死社会へ向かい、疾病構造が変わり、社会生活や個人としての多様性が拡がり続ける時代において、医療・看護の重要性は益々高まり、そのあり方もまた変化し続けています。そのような社会で、医療者として、看護師としてどのような役割を果たしていくかを、自ら考え判断し行動していける人材を育成していきたいと考えています。

 看護師は病院のあらゆる部門、すべての職種と直接的協働、連携をしている唯一の存在だと思います。何故なら看護師は、患者を生活者として捉え、その方らしく生きることを支援する役割があるからです。その方の問題に応じて、病院内の各専門家が専門的な介入をすることに対して、必要な介助や支援、調整などを継続的に行っているのです。患者を健康問題という側面だけではなく、社会生活を営む固有の存在として深く理解することができてこそ、この役割が果たせると考えています。しかし、多くの患者に対応していく中で、多様な個性を認め、その方らしさを大切にするということは、時に大変な困難を伴うこともあります。迷いや混乱の中、医療者として看護師として何をすべきかを判断する際の拠り所は、人を尊重し、その方にとっての最善を考える倫理観だと思います。

 そのためには、看護師としてのアイデンティティーを確立し、患者中心の看護が実践できる看護師の育成が必要です。当院では、卒後教育の重要性にいち早く注目し独立した看護教育部を45年以上運営してきた歴史があります。ひとりひとりの看護師が自ら学び続けるために、組織として支援する重要性を真に理解しているという自負も持っています。看護教育部が企画、運営しているプログラムは、座学の学習だけにとどまらず、今目の前にいる患者のケアに成果を発揮できる構成になっています。大事にしたいのは、単に学習するだけでなく、得た知識、技術を実践の場に適用させ、患者の抱える問題を少しでも解決に向けることで、患者に対して結果を出すことだと考えています。そのためには、真摯に患者と向き合い、看護師として何をすべきかを自ら考え行動できる自律性をもった人材を育成していきたいと考えています。

 看護という仕事は、患者の人生に深く関わり、人間の身体的、精神的弱さや脆さに向き合う仕事です。しかし、それと同時に人間の持つ強さや、果てしない可能性、美しさ、素晴らしさ、尊さにも触れられる奥深い意義を持った仕事だと思います。また、看護師である自分自身の価値観や生き方を、看護を通して深く見つめ直す機会が得られる仕事だと思います。

 看護師という職業を選択した皆さん、この意義深くやりがいのある看護を一緒に実践していきましょう、「自分の家族・最愛の人を安心して任せられる病院」で。

副院長・看護部長 若本恵子